ぱちlog
ネスマグ



「おはよう、ネス」


もう日課になってしまった、朝の散歩。
まだ朝露の残る葉っぱだとか、小鳥の囀りだとか、まだ埃の立っていない空気は、本当に本当に気持ちがいい。

そんな森の中を暫く歩くと、優しく根を張る巨木が一本、青い空に向かって悠然と枝を伸ばしている。
その木におはようを囁いて、根元の凹みに腰を下ろす。


「今日もいい天気だね」


「明日も晴れるといいね」


「そう言えば、今度またみんなが来るよ」


「ねぇ、ネス」


どれだけ言葉をこぼしても、どれだけ視線を向けても、いつも傍にあった毒舌は決して返ってこない。
終いには、言葉と一緒に涙までこぼれる始末で。


「ネスは、よく俺の事馬鹿って言ったけど、ネスだって馬鹿だよ」


「こんな、こんな事して、」


「ネスは馬鹿だよ」


ざわり、と風に葉が揺れた。
それが無言の抗議に思えて、また、涙が溢れた。


「何だよ。ちゃんと、言ってくれなきゃ分かんないだろ。俺馬鹿なんだから」


ざわざわと、木はただ風に揺れる。
世界の毒を吸い上げて、世界のために其処にある。


「ネス、ネス…」


声は、届かない。


「ネスティ…っ!」


ただ、為す術もなく泣き崩れる彼を慰めるように、葉が一枚、ひらりと、頬に落ちた。





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