ぱちlog
百四



不意に、相手が目の前から消えた

もう二度と会えないのだと、少し経ってからやっと気付いて

でも、気付いたってもう遅くて

後悔したって

名前を呼んだって

もう

隣に並び立つ存在は戻らない

そんな―

夢を見た





「泣いたのか」

おはよう、という挨拶も抜きに、そっと目元を撫でられて

体が竦む

普段ボーッとしているくせに目ざとく見つけるその性分が

憎らしくもあり、嬉しかった

「…べつに」

傍らにある存在が当たり前すぎて

余りに心地よくて、考えることを止めていた

忘れてはいけない事だったのに

「四月一日?」

訝しむ声を無視して胸元に顔を埋めた

きっと

面と向かっては言えないだろうから

ありがとう




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