あと5秒 「あたし転校するの。明後日」 「ワォ。いきなりだね。だから?」 あと5秒 「…だから?って言われても…それだけのことだよ。少しは悲しい!とか思わないわけ?」 「別に…毎日付きまとってきた煩い奴がいなくなって静かになると思うよ」 たしかにそうかもね、と皮肉に少女は流した。2人は恋人同士でもなんでもない。ただ、応接室に唯一入ることを許されているだけ。ただ、それだけのこと。雲雀曰く「許した覚えはない」らしいが。 「でも正直寂しいでしょ?」 「雑用係がいなくなって不便になるなぁとは思うけど」 「雑用係になった覚えはないんですけどー…行かないで!の一言も言わないかな…本当に可愛くない委員長さんだね」 「僕が“行かないで”と言ったところでなにか変わるわけ?」 「あはは…雲雀らしいや。その通りだね」 はぁ、とお互いに無意識にため息をつく。“雑用係”とはいえ、いなくなるのはやはりいい気がしなかった。 「ねぇ」 「どうしたの委員長」 「行かないで」 「…なにも、かわらない、」 「その通りだね」 クス、と僕は笑う。 沈んでいく夕日が2人を家へと急かしているけれど。 「私、雲雀のこと好きだったんだ」 「今更?そんなの知ってたけど」 「雲雀も同じなくせに」 「やめてよ。勘違いも甚だしい」 「…冗談だよ」 足が震えて声も震える。『帰ろう』と言えないのは何故? (せめて、せめて) あと5秒 (傍に居させて) 僕の頬を何かが伝った ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 企画「小春日和のお茶会」様に提出させて頂きました。 090223 [次へ#] |