テオに触れられる

スルッと三角巾を取られ、次いで髪を一房掬われて。
「お?」と思ったときにはもう皆驚いた顔でナマエ(の背後)に注目していた。ふいに耳元を柔らかい吐息が掠め、思わず肩が跳ねる。

数秒後にテオはナマエの髪から顔を離した。
…待て待て待て。


「ちょ、テオ、何を」

「ナマエお前シャンプー変えた?」

「…薮から棒に……!」


何だよお前どんだけ女の扱い重ねてんだよ!
とは口に出しては言わないが。口に出さない分ナマエはぐっと詰まった。
賄いを並べ終えたテオはテーブルをぐるっと回って所定の席につく。


「いや、なんか今日違うニオイさせてっから」

「鋭すぎでしょう…。シャンプーじゃなくてトリートメント」

「はあ。トリートメントな」

「こっちのが合わないから日本から送ってもらって」


しかし気付くもんかなぁ。
ナマエはくしゃ、と髪を掻き混ぜた。いまさら少しドキドキしてきた。
そしてニコレッタはようやく「きゃああ…!」控えめに黄色い悲鳴をあげて現実に戻ってきた。目が輝いている。
そういう表情はオルガさんにそっくりだ。


「て、テオー!色っぽーい!今のすごく大人のカップル!て感じだった!」

「…なんだよ」

「きゃー!きゃー!すごーいステキー!もっかいやって!」

「はぁ!?やだよ!」

「またまたー。照れてるんだろうテオ? ナマエにあんなキザに決めちゃって」

「誰がだ」

「…止めてやれ、ヴィート」


騒ぐニコレッタに便乗してからかうヴィート、クールなテオに呆れ顔のルチアーノ。
苦笑で眺めるクラウディオはいいが「アジアの女性の黒髪は美しいですよねぇ」笑顔のフリオはちょっとズレている。
奥さんも黒髪じゃなかったっけ。フリオ、そんなこと言ってていいのだろうか。


既にもぐもぐやっているジジに倣って、ナマエは「…いただきます」と手を合わせた。



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