冬のおわりの日暮れ

日が暮れるころ。
薄くてしっかりした雲が下の方にゆったりと留まり、さらっと晴れた空が黄色から鈍い水色へと無音のうちに沈んでいく。
その静けさが、まるで海のよう。


「ああナマエ、こんなところに…。寒くありませんか?カッフェを淹れましたから中へ」


営業前、ひとり外でデッロルソにもたれかかっていたナマエ。クラウディオに見つかった。

ここの暮れは、日本の暮れとはやっぱり違うと思う。
日本のあの、ひどく濃厚な季節。身に迫る春夏秋冬。


「入道雲が見たい」

「入道雲…。まだ遠いですね、夏は」

「夏は夏で寒いのが恋しくなるんだよね」


空が何色だろうが、暮れにはどうも感傷的になっていけない。
動かないナマエの腰に手を添えて、クラウディオは中へ入るよう促した。
それにゆるゆると従う。


あとしばらくもすれば開店だ。

ドアを押さえていてくれるクラウディオにグラーツィエと呟いて、身を包む暖かい空気に息をついた。



昨日、今日、たぶん明日。
ゆっくりゆっくり寒さが緩んで、冬がおわる。




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