3-02 紅茶

「紅茶を飲もうと思うが、お前も要るか」

「…え、あ、良ければ、頂きます」


スリザリン三年生の分のレポートを提出に来ただけのナマエは瞬きをした。珍しく機嫌でも良いのだろうか。そうは見えないが。

スネイプの杖の一振りで現れた二杯の紅茶はやわらかく湯気を燻らせていて、魔法とはつくづく便利なものだと思わせた。
飲みたいと思っても、実際に淹れるまでが手間であり面倒なのだ。


「銘柄に文句などないだろうな。砂糖は?」

「あれば欲しいです」

「なければ出すのが魔法だ」


さらに杖を一振りすると、白い角砂糖の入った小さな陶器が目の前に。
失礼して一つ頂き、紅茶に落としスプーンで混ぜて、ひたすら冷ます。熱さに問題なく優雅にカップを傾けるスネイプが物言いたげに目を細めた。

ようやく口をつけられそうで、慎重にひとくち含む。それから少し考えて、角砂糖を二つ追加した。それを見てスネイプが隠しもせず嫌そうな顔をしたので、ナマエは思わず笑った。
スネイプ教授は喋らずとも意外と雄弁である。


「お嫌ですか」

「君以上に紅茶を砂糖まみれにする馬鹿を知っているのでな。君の方がかろうじてマシだが、しかしもはや紅茶ではない」

「う、そうですか…」


スネイプが言うのは、どこぞの甘党な防衛術教授のことだろう。
それからゆっくりと二口三口楽しんだところで再びスネイプが口を開いた。


「機会があれば、我輩が手ずからに紅茶を淹れて差し上げよう。我がスリザリンに属する淑女ならば、紅茶のたしなみくらい身につけておくべきと思わんかね」

「…砂糖は」

「無しだ。どうしてもというなら甘い甘い“生ける屍の水薬”を提供するが?」

「い、いえ結構です!」


しかし急にこうも目を掛けられるとは一体どうしたことか。スリザリンとはいえ、特に目立つこともせずやってきたはずなのに。
内心首を傾げたが、まぁいいだろう。嬉しいことに変わりない。


「…楽しみにしています」


教授とお茶会、しかも紅茶のマナー講習会ったらどう考えても俺得。今後しばらくレポートの提出役は積極的に請け負っていこうと思った。

黙ったままのスネイプ教授が、満足そうな顔をした(多分)。




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あきゅろす。
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