非言語コミュニケーション


「タカ」

「…ん」

「ありがと」



名前に呼ばれて大門は動かしていたペン先を止め、砂糖の入った陶器を手渡した。
手元の紅茶に一杯加えて名前はくるくるとスプーンで混ぜる。



「名前」

「ん、どんなの?」

「図書館の、分厚い方」

「…はい」

「どうも」



しばらくして大門が名前を呼ぶと名前は近くに放り出された大門の学生鞄から一冊の本を選び出し、大門に渡す。
受け取った本を適当に開き、パラパラめくって目的のページを見つけた大門は再度カリカリとペンを走らせた。


誰かが誰かを呼ぶ度にケータイから顔を上げて一連の流れを眺めていた小石川は眉を寄せる。
こいつら電波か?
主語述語はどこにやった。



「タク」

「あ、頼む」



名前に名前を呼ばれ、既に紅茶を飲み干していた小石川は自分のカップをソーサーごと差し出した。名前は手を伸ばして受け取り、二つのソーサーを持ってタンタンと階段を降りていく。
そこで小石川は理解する、なるほど自然なことじゃないか。


非言語コミュニケーション





(414字)
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陽李いつは様に捧げます。
祭りへのご参加ありがとうございました!^^*




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