110714 車フェアおまけ

試乗を終えてグウェンダルさんと再び会場に入り、ブースに戻って先程のテーブルに着く。
いろいろ話しながら、結局は今後も車選びに付き合ってもらうことになったので(やっぱりちょっと嬉しい)、お互い名刺の裏に携帯の番号とメルアドを書いて交換したりもした。

そのままお喋りが日常の苦労話などに及んだ頃、呼びに来た部下らしき方にグウェンダルさんが連れて行かれて一人になってしまった。ら、今度はスーツ姿の知らない人が区切りからひょこっと顔を出して「こんにちは」と笑った。
その爽やかさといったら、女子高生ならちょっとした嬉しい悲鳴くらいは上げていただろう、というものだ。


「急にすみません。俺はコンラートと申しまして、先ほどの彼の…グウェンダルの弟なんです」

「はあ…、っ!?」


はぁ!?と思いきり失礼な驚き方をしそうになったのを咄嗟に堪えた。
弟。そんなまさか。いや仮にそうだとしても、


「なんつう美形兄弟…!!」

「恐縮です」


こっちは心底仰天したというのにさらっと流してしまえるこの器量もまた、何とも。…単に言われ慣れてるだけかもしれないな。
そこで私はこちらから名乗っていないことを思い出した。


「あっすみません、私は苗字名前といいまして、さっきグウェンダルさんに試乗を案内して頂いて…」

「ええ、見てました。びっくりしましたよ」

「…びっくり?」

「営業は鬼門だとか何とかぶつぶつ言っていたのに、あなたとあんなに楽しそうに帰ってくるから」


それを聞いてつい苦笑してしまった。お兄さんの車好きのプライドに火を点けてしまったみたいで、どうも。
コンラートさんは何故だかとても嬉しそうににこにこしている。


「苗字さん、どうぞ兄をよろしくお願いしますね」

「えっ、いやいやこちらこそ…?」


よろしくというか、面倒をみてもらうのはこちらなのだけれども。どうやら兄思いらしいコンラートさんは流れるように私の手を取り、気がつくと私は彼と固い握手を交わしていた。どうしてこうなった。

それからそのままあまりにもスムーズな流れで携帯の番号まで交換してしまった。こちらは手軽に赤外線だ。


「それでは、俺はまだ案内している方がいますから」

「えっ大丈夫なんですか!?は、早く行ってあげてくださいよ!」

「いえ、知り合いなんです」

「あ、あぁ…」


そう言う彼の向こうには、こちらをチラチラと窺っている若い男の子がいる。高校生くらいだろうか、素直そうな黒髪の子だ。目が合うと慌てたように軽く会釈してくれて、今時見ない良い子だなぁと感心しながら会釈を返す。
コンラートさんは「ではまた」と微笑むと、例の男の子と去っていった。
そして上手いこと入れ替わるようにグウェンダルさんが戻って来るのである。


「すまない、待たせてしまった」

「いやー楽しく待たせてもらいました、弟さんも格好いいですねぇ」

「…コンラートだろうか?挨拶に来ていたのか」

「はいコンラートさん、お知り合いの方を案内してる途中だったみたいですけど声かけてくれて」

「ふむ、大方渋谷の者だろうな。機会があれば彼ももう一人の弟も是非紹介しよう」

「美形兄弟がもう一人…だと…!」

「?」


今後は交友関係がものすごく広がりそうな、楽しい予感。



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長男→幹部
次男→営業部長
三男→新入り(昇進コースまっしぐら)
眞王(社長)が立ち上げた会社。渋谷さん一家とは銀行のアレコレで付き合いあったり幹部に膿のツェリ兄様がいたり(社内派閥要素)ってどうですか。
おまけでした^^







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