110426 レモンソース
珍しく急ぎの案件がない、穏やかな春の日。
午前は書類や細々とした処理を黙々とこなし、お昼になって。たまには労ってやるかと思い立ち、長い付き合いの刑事と新米検事を連れてカフェに来た。
糸鋸刑事は大いに歓喜し、感動し、ここぞとばかりに六つ七つ注文を並べて嬉しそうにリゾットを掻き込んでいる。時折手を休めてこちらにニヤニヤと笑みを寄越す。飯粒をこれでもかとくっつけた顔で。…やめたまえ。
新米検事の方の苗字くんは、既成のサンドイッチにかぶりついてのんびりもぐもぐ咀嚼し、目を細めた。
「このチキンのレモンの薫り。御剣さんと一緒にいるなぁって感じします」
「…レモンソースから何故私を連想するのだ」
「オシャレで美味しくて、御剣さんらしい良いカフェですね」
あまりにも呑気な笑顔で礼を述べるので、照れ隠しの皮肉を言う必要もない気がした。素直に「うム」とだけ返して、お気に入りの紅茶を啜る。
良い天気だ。
近年稀な、貴重すぎる穏やかさであることに気が付いた。
春野菜とレモンソースチキンのサンドイッチ
検事局に戻ると、担当検事未定の殺人事件が待ち構えていた。裁判は明日だという。部下二人がやたらやる気に満ち溢れていたので、そのまま引き受けて現場へ向かうことにする。
ふとレモンソースの薫りが鼻腔をくすぐった気がして、本当に一瞬の平穏だったな、と少し可笑しく思った。
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某コーヒーショップでサンドイッチ食べてたらなんだか御剣さんを思い出した、という話。
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