xxxxxx 紙一重(ギャング/成瀬)
ふ、と名前は意識が浮上するのを感じた。同時に瞼の裏が赤く透けて見え、反射的にぎゅっと目に力が入った。眩しい。
光で目を痛めないようゆっくり瞼を押し上げようとしてあれ、と思う。瞼が重い。体がちっとも覚醒していない。意識よりも早く目がパッと開いて上体を飛び起こし軽やかに動き出す、いつものあの感覚がない。
瞼が開ききらないまま目だけを動かして部屋を見回し、状況を悟った。カーテンが閉まっていない。だから部屋がいつもより早く明るくなって、それで目が覚めたのだ。
なるほど、と成瀬の腕の中、身じろぎしないよう気をつけながら名前は思った。道理で成瀬さんがまだ起きてないわけだ。眩しさに気付きさえしなければ、身体はいつもと同じだけ睡眠をとろうとするだろう。
せっかく成瀬より早く起きれたようだし寝顔を見てみたい気もしたが、それだけ動けばきっと成瀬は起きてしまう。名前はあっさり諦めた。
それはまた次の機会にしよう。
ああ、カーテンを閉めたいのだけど、どうしよう。
どうしようどうしよう、と考えるうちに、自然と瞼が落ちてくることに名前は気が付いた。そういえばまだ眠い。
成瀬は自分と窓の間、ちょうど窓に背を向けて眠っている。ならば成瀬さんの胸に顔をうずめてしまえば光は避けられるな。
勝手に再び眠りにつこうとする頭でぼんやり思い、名前は成瀬に擦り寄った。成瀬の体温がひどく心地良い。そのまま目を閉じる。小さく呼吸をする。
恐ろしいほどの至福。
この幸せが、いつどのように壊れるかなんて無粋な考えには今は頭を回さないことにして、ただ睡魔を享受する。
思考を放棄すれば意識はふつりふつりと白く途切れはじめる。
無意識か起きているのか、肩に回されている成瀬の腕が名前の頭をそっと撫でた、気がした。
紙一重
幸福と隣り合わせの恐怖にまとめて見ぬ振りをする、
次はどうぞ、あなたが起こして。
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