100417 愛する
例えば、もう少し時間が経ったなら。きっとこの感情にも慣れることが出来て、もっと穏やかにあなたを愛せるだろう。
例えば、もう少し歳を重ねていたら。余裕をもって自身を把握して、何よりもあなたを優先した愛し方が出来るだろう。


だけど今は、どうしようもなく熱に身を焦がされるばかりで。



「…名前、」

「青雉さん」

「うん」

「青雉さん……」



名前は青雉の大きな手を、祈るようにただ握り締めるばかりだった。隣に座って時折ソファのスプリングを軋ませる青雉は、名前の様子に何を察したか、静かにそこにいて、名前に応える。

二人が話さなければ、ただただ静寂の室内。



言葉では到底表しきれない。好きも愛してるも使い古されすぎて。
抱き締めたらきっと止まらなくなって、でもいくら強く抱き締めても足りないのだろうから、やはり手を握るに届めたまま。
抑えて抑えて抑えて、後には感情を爆発させる余力など残らないように。ただ疲れきってしまえば。


それでもどうしようもない!
どうすればいい、
どうすればこの気持ちをあなたに伝えられる?
この熱の行き場はどこに。


名前は腹の底から叫びたいのも勝手に熱くなる目頭にも堪えた。
ここ最近、こうやって衝動に堪えてばかりいる。好きすぎてどうしようもなくて苦しくて。
両想いでもこんなに苦しいのなら、青雉さんがわたしを好きでなかったとしても結局苦しみは同じくらいだったかもしれない。


青雉さんはわたしが想う程にはわたしを渇望しちゃいないだろう。
考えては軋む心臓。

失恋と同じほど苦しくて愛情は均衡してなくてこんなに辛くて、
なんてこと。こんなものを恋と呼ぶというのか。
(苦しい、泣きたい、いとしい、大好き。本当に本当に愛しているんです)




黙って手を握る名前、
しかし青雉が心血注ぎ込んで抱き締めたい衝動を堪えていることなど知る由もなく。










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