やわらかな命ひかる


「私の誕生日、おばあちゃんの命日なんです」



名前がゆっくりと喋る。成歩堂は名前のお腹を撫でた。
来月の今頃生まれてくるであろう命が、そこにある。



「おばあちゃんが亡くなったのは私が生まれる前だけど、母はこの日に私が生まれてくれて嬉しかったって」

「うん」

「この子も、だれかの命日に生まれるんですよねー」

「そうだね…」



たしか、世界中では1秒に3人の赤ちゃんが生まれているはず。
今も、今も、今も。


毎日がだれかの命日で、
毎日がだれかの誕生日。
チヒロさんを亡くしたように。
生まれてくるこの子のように。
そうやって命が巡ってる。


…まあ、チヒロさんには今でも逢えるけど。
それはそれで幸せなことだろう。



「お、」

「あ、蹴った」



ぽこん、と手に振動を感じて、成歩堂はまじまじと彼女のお腹を見つめた。



「みぬきがね、名前さん似だったらいいのに!って言うんだよねえ」

「ふっふ!みぬきちゃんは妹がいいみたいですね」

「オドロキくんも女の子がいいって言うんだよな」

「あれ、龍一さんは男の子のがいいですか?」

「…いや、どっちでも、嬉しい」



最近、みぬきは彼女にくっついてまわって、高い所のものを取ってあげたり落としたものを拾ってあげたりしている。
オドロキくんも、大きなお腹で歩き回る彼女を見ると慌てて仕事を代わったりする。ハラハラして見ていられないそうだ。
同じ男としてその気持ちは僕もよく分かる。彼女は笑うけど。



こうやって日々生きていると忘れてしまうけど。人が生まれることは奇跡だって、最近は強く感じる。
奇跡なんだ。僕と君の子供が生まれてくるなんて。



「男の子なら龍一さんに似てくれたらいいなぁ」

「女の子だったら、そこらのやつには嫁にやれないね」

「ふふふふ。響也くんみたいな子を連れてきたらどうします?」

「叩きのめすかな」

「ちょ、怖い!」

「そこはほら、父親を越えてこそでしょ」


君に会うのをみんな楽しみにしているんだ。
早く生まれておいで。



やわらかな命ひかる






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