091129 泣かない

バンッ、と、名前の陣の札を須藤の手が払った。
須藤の陣の札は一枚。試合終了。

汗の浮かぶその額にピキッと青筋が走る。
それを目にした名前はダッシュで逃げたくなった。しかし逃げられる訳がない。


「遅えっ!!」

「は、はいっ」

「後半一字決まりの反応が遅い!お前きちんと記憶し直せてねーだろ?!」

「うっ…」

「あと大山札の囲みも甘い!俺に全部取らせんな!」

「ううっ」

「振りも全然キレがねぇし、二字も三字も呼吸が掴めてない…総じて話にならねぇ!」


そんなこと言われても、が名前の心境である。口に出すと恐ろしいので実際は項垂れるだけだが。
須藤はハ、と息を吐いて汗を拭った。19枚差。
まだ。
もう。


「…最初のあたりの一字決まりは良く取れてる。得意札増えてきたな」

「…あ。…す、少し」

「いーよ。俺も取れなかった」


ひどい。飴と鞭。嬉しくなってしまう。
名前はまだ荒い息で残った札を見つめた。目がじんわりと熱を持つ。
そんな後輩を見ながら須藤が呟くように言う。


「早く強くなれよ。俺一年しか教えられねーんだから」


ひどい、と再度思いながら、名前は頷いた。










「あ、お前合宿の部屋俺の隣な。空き時間休めると思うなよ」


このドS!







(496字)
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
たまに褒められて嬉しくても泣かない、この人が一年しかいなくても泣かない。

短編(さくやこのはな)の続きと思って頂ければ。たぶん2ヶ月後くらいの話
須藤さんがSの子になるように頑張りました^^




第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!