xxxxxx 身が軋むような希望(tos)
夢の眩しさから追われて、ナマエはうっすらと目を開けた。
部屋はもう朝の光に満ちている。
「あ、起きた?おはようナマエ」
「…おはよ、コレット」
隣で寝ていたコレットはもう起きて、布団の上に上体を起こしていた。
目が覚めたナマエに気付いてニッコリと笑いかける。
最後の決戦前、世界中をまわる一環でミズホに訪れていた一行。
昨夜はロイドが久しぶりに皆で寝ようと言い出して、畳の大部屋で雑魚寝することになった。一部屋に多数の人気があるのはそのせいだ。皆寝ているが。
下に直接敷く布団、しかも畳など馴染みのない者がほとんどだったから、単なる物珍しさに決戦前の昂りと意気込みが相まって賑やかな夜になった。
ナマエは仰向けになっていた体をコレットの方に向けて背中を丸め、目を閉じた。腕で顔を隠す。
薄く膜を張っていた涙が目尻を伝って耳へ落ちた。
「…コレット、ロイドとコレットの結婚式の夢、見ちゃった」
「えぇ!?」
「全員でお祝いしてさ。コレット、綺麗だったよ…」
キラキラ眩しい陽光と降りしきる花びらの中で、真っ白なタキシードを着たロイドと、ふわりとしたウェディングドレスに身を包んだコレット。どちらも照れたように幸せそうに笑っていた。
そしてそれを祝福するメンバーは一行から新郎新婦の親族、果ては世界中で知り合った人々まで勢揃いだ。一人も欠けることなく、礼服を着て、誰もが心から笑顔で、本当に幸せで。
世界は平和で。
だから、何故か、現実では決して叶わない気がした。
せめて夢だけでもと、慰められたような。
「…慰めなんか、要らないのに」
泣きたくなるほど幸せな夢だった。胸が痛い。私の手には入らないままの未来なのだろう。
その時、その場に居合わせることは出来ない。
そして多分、こちらに背を向けて庭に立っている彼の人もまた。
非常に優れたその天使の聴覚で、この会話もすべて聞こえているはずだ。
全てを切り離しこの星へ置いてでも責を果たしに行こうとする、彼を独りにはしたくない。
だから、わたしは、
けれど。
「デリス・カーラーンは遠いよ…」
「え?」
「…何でもない。幸せになってね、コレット」
「う、うん?でもロイドがわたしのこと好きなのかもわかんないし…」
「好きだよ。きっと」
大丈夫。
そしていつか結ばれる。
新郎の父の目も私の目も届かない、幸せなどこかで。
身が軋むような希望
幸せな花嫁が投げたブーケ、どうして私の手の中へ落ちてきたのだろう。
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世界を正して後、月へ旅立つ父と供をするつもりの異世界ヒロイン
(080702)
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