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おお振りText
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※カグさん高校3年、榛名2年の冬設定。


「えー! クリスマスは補習―?」


「そ。受験生なんだから仕方ねーだろ?」
「そースけど…」
「お前だってクリスマスは部活だろーが」
「そーなんデスけど…」


 むうっとあからさまに不機嫌な顔をすると、目の前の恋人はぷっと吹き出した。

「…なんスか、もう」

 俺の顔見て可笑しそうに笑い続ける姿に溜め息を一つ。

「カグさんは俺と一緒に過ごしたいとか思わないんだ」
「誰もンな事言ってねーだろー」
「じゃあ、何笑ってるんスか」

 ぶつぶつ文句言ってると、ようやく笑いが収めてこちらを見た。

「榛名、24日の練習っていつも通りか?」
「…はい」
「じゃあ、俺のが早く終わるな」
「へ…?」

「待っててやるからさ。で、わざわざ聞いて来たって事はどっか行きたい所とかあんの?」
「え……っと、あ! あの駅前のツリー」
「あー…あそこのイルミネーションかー」

 お前、こーゆー時結構ベタだよなー、とか笑われる。

「つか、カグさんっ!」
「ん?」


 とりあえず話をストップさせる。
 なんだか誘導尋問のように、話が急展開で進みすぎてる気がする。さっきまでやっぱり逢えないか、と落ち込んでた気持ちでは追いついていかない。

 一つ、深呼吸。
 そして、とりあえず確認。


「いんスか…?」

 至極真面目に聞いたつもりだったのに、また吹き出すように笑われた。

「だって逢えないなんて事はないだろ? それに…」

 ふとそこで言葉が途切れてそっぽを向かれた。
…あれ、心なしか耳が赤い?

「……」
「…カグさん?」

「…別に俺だってお前と一緒に過ごしたくないとか、思ってる訳じゃねーし…」

 どんどんと語尾が小さくなって、

「カグさんっ!」
「…何、」
「も一回! あんま聞こえなかったから、もっかい言って下さい!」
「…っ」
「かーぐーさーん?」
「……駅前のクリスマスツリーだったよな?」
「ちょっ、話戻りすぎなんですけど!」
「…早く決めねーと昼休み終わるだろ」
「それはそーですけど…」

 そんな会話を見計らったようなタイミングで予鈴のチャイムが自分の声をかき消していった。

「ほら、授業始まるぞ」

 弁当をしまいながら勝ち誇ったように笑うその頬に素早くキスをする。

「っ…榛名っ!」
「誰も見てないですよ。ほら、行きましょ」

 飲み終わったパックやら食べ終わったパンの袋やらをビニール袋に入れて立ち上がる。
 さっと手を差し出すと、弁当袋を包んでからちゃんとその手を取ってくれる。
 そのまま立ち上がったら、階段までの短い間に外されてしまうのだけど。

「約束、ですからね」

 別れ際に耳元に小さな声で囁くと、一瞬きょとんとした顔をした後で少しだけ笑って頷いた。

「ん…ちゃんと待っててやるから」

 踵を返して駆けて行く後姿を見えなくなるまで見つめてから、自分の教室へとダッシュした。





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