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11周年記念物語「人魚姫の想い歌」
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……って、何てことを考えているんだろう。

トラネコさんは憧れの外の世界から来た人(今はネコの姿だけど)で、初めての空の海の住人以外のお友だちで、引っ込み思案のわたしのお友だちになってくれて……せっかくお友だちになれて、いろいろあって、ずっと一緒にいられるようになったのに、こんなことを思うなんて。

好きなトラネコさんとお友だちで、ずっと一緒にいられるようになって、それだけで十分幸せなのに。なのにそれ以上のことを望むなんて……。
 
 「そうだ。試しにこのファッション誌の服を着てみるっていうのはどうかしら?」

突然、ショーコさんが言い出した。

 「え? そんなこと出来るの?」

カリナさんが聞く。

 「ええ、もちろん。うちにはそれが出来ちゃう魔法使いがいるから」

ショーコさんがいたずらっぽく笑って、カウンター席に目を向ける。

カウンター席には不思議な青い花のついたつばの長い紫色の帽子を深くかぶって、ナルさんが読んでいる本より分厚い本を読んでいる精霊さんがいた。

その精霊さんをわたしは知っている。

わたしと同じ空の海の精霊さんで、お名前は空の海の魔女さん。精霊の中でも特に強い力を持っていて、いろんな魔法が使えて、その力で空の海を守ってくれている。

 「誰が魔法使いだ。あたしは魔女で、魔法使いじゃないよ」

空の海の魔女さんはいつも難しそうな顔をしているけど、今日はいつもより難しい顔をしていた。

 「魔法使いも魔女も似たようなものでしょ。というか同じことが出来るなら、同じじゃない。細かいことにこだわりすぎなのよ、リーちゃんは」

リーちゃんというはショーコさんが空の海の魔女さんを呼ぶ愛称で、ショーコさんがそう呼ぶのは空の海の魔女さんの本当のお名前を知っていて、そのお名前からそう呼んでいるらしい。

 「あんたは大雑把すぎだよ、ショーコ。そもそも、あたしが何でそんなことをしなきゃいけないんだい?」

 「それはもちろん、偉大な魔女は女の子を可愛く大変身させて、幸せに導く使命があるからよ」

 「……あたしはいつからシンデレラの魔女になったんだ」

 「それは今日、正確には今からよ」

 「じゃあ、本日は営業終了だよ。また明日来な」

手をひらひら振って、空の海の魔女さんは読書を再開した。

 「じゃあ、わたしも今日はもう営業終了するわ。そうなったら、リーちゃんはこれ以上、おかしを食べられないし、今来たばかりのレンちゃんもおかしを食べられなくなるけど、いいのね?」

にっこり笑顔のショーコさんの言葉に、空の海の魔女さんがぴたりと動かなくなった。しばらくして、空の海の魔女さんは深いため息をつくと、ぱたんと本を閉じた。
 
 「……わかった。やればいいんだろやれば。ビビディ・バビディ・ブーとか言えばいいのかい?」

 「そっちもいいけど、キュアップラパパ!っていうのも可愛くてオススメよ」

 「そっちは別の魔法使いの呪文だろうが!」

空の海の魔女さんが大声で言い放つ。これがツッコミというものだと、前にショーコさんが言っていたのを思い出す。

そして、誰かが「そっちの魔法使いもそういうことをやっていた」と言った。

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