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11周年記念物語「人魚姫の想い歌」
番外編その2 ・月の夜、精霊語り合う
三日月の光が、次元の挟間の夜を照らす。

漆黒の空を照らすその光は空に消えていった『彼女』を悼むような、苦しんだ『彼女』を癒すような……どこか儚く、淡く優しい。

 「な〜んて、ちょっとセンチメンタルかしら」

ひとり呟いて、わたし、ショーコは住居スペースからお店へのほうへ向かった。

今日はたくさんの人間と精霊たちが泊まっているけど、とても大人数が泊まっているように思えない静けさである。

今日はいろいろあって、みんな頑張ったから、疲れてぐっすり眠っているみたい。

え? おかしのお店なのにコウキくんたちや、クウちゃんたち、それに精霊のみんなが泊まれるほど部屋はないんじゃないかって?

それなら大丈夫! 

最近、コウキくんたちやクウちゃんたち、精霊たちがよくお店に来てくれるから、いつでもみんなが泊まれるように友だちの空の海の魔女のリーちゃんに頼んで、お店の外観を変えずに住居スペースにたくさんのお部屋を作ってもらいました!

と、説明はここまでにして。

お店の中に入ると、月明かりを頼りに本を読んでいる精霊が一人。

 「暗いところで本を読むと目が悪くなるわよ。リーちゃん」

声をかけると、空の海の魔女ことリーちゃんはこちらを向いた。

 「あたしは精霊だ。人間のように目が悪くなることはないよ」

 「じゃあ、精霊はスマホでゲームし放題ね」

本編と番外編、それから登場人物たちと物語の雰囲気から察するにわたしたちの物語は精霊や魔法が出てくるファンタジーの物語。

なのに、そんな世界にスマホがあるなんておかしい……と、ツッコミを入れたいと思うそこのあなた!

ここはいろんな世界のいろんな人が集まる次元の挟間。

なので、スマホがある世界からご来店されたお客様だっていらっしゃいます。

そのお客様とスマホのゲームの話をしたら盛り上がって、使わないスマホを譲ってもらって、そのスマホをお店で使えるようにリーちゃんにしてもらいました……ということがあったので、このお店にはスマホがあるわけで、スマホのお話が出来るというわけなの。

 「説明はそれくらいでいいから、何で、スマホゲームなんだい? ゲーム機は他にもあるんだろ?」

 「カッコいい男性が出る恋愛ゲームがやりたいの」

 「……あんた、旦那のリスーノ一筋じゃなかったのかい?」

リスーノというのはわたし、ショーコの愛しの旦那様。

リスーノ・ウエダことウエくんはおかしの国の一番のパティシエで、おかし職人としての腕は超一流、おかしの国のパティシエは国を守る騎士でもあるから、騎士としても最強で、最高最強の自慢の旦那様である。

そして、おかしの国の一番のパティシエという称号におごることなく、いろんな世界を回って、おかし職人の腕と騎士としての実力を磨いている。

会えないことが多くて寂しい時もあるけど、妻として、また同じおかしの国のパティシエとして、努力する彼を応援したいと思っている。

優しくて誠実で努力家で、おかし作りに集中する顔と戦う時の顔は素敵だし、作るおかしは繊細な芸術品のような見た目なうえ、とっ―――――――てもおいしいし、旅のお土産は忘れずにくれるし、とっ―――――――てもカッコいい愛しの旦那様です。

 「おーい、ショーコ。旦那のことを考えるのと説明はそれくらいにして、そろそろこっちに戻ってこい。それと恋愛ゲームをやるにしても、ゲームとはいえ、他の男に夢中になるのはよくないんじゃないかい?」

 「ウエくんに似ている男性が出ているゲーム限定で、ウエくん似の子狙いでやるわ」

 「……リスの男が出る恋愛ゲームがあるのかい?」

 「さあ? 探してみればあるんじゃないの?」

呆れるリーちゃん。わたしはきっとあると思うんだけどなと思いつつ、リーちゃんの隣に座った。

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