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11周年記念物語「人魚姫の想い歌」
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水の球体を消すと言っていたのに、まだ消していない……もしかしたら、空の海の魔女も(トラネコはわからないが)レンちゃんを消したくないと思っているんじゃないだろうか。

 「コウキはどうするつもりなのだ?」

ソフィアがたずねてきた。

 「オレは……トラネコたちが戻ってくるまで待ちたいと思う」

 「クウっちもそう考えてるのかもなの」

きっと、ミルの言う通りだろう。

トラネコが水の球体に向かったあと、すぐに動いたのはクウちゃんだった。

トラネコを追って、水の球体に向かおうとしたが、そのあとすぐに水の触手が襲いかかってきた。

今も水の球体に近づこうと必死に戦っている。

 「コウキさんのお気持ちも、クウちゃんのお気持ちもわかりましたわ」

サリサちゃんがにっこり笑うと、ユイオスさんに振り向いた。

 「ということで、ユイオス。空の海の魔女さんに頼ることなく、この場を何とかなさい」

ユイオスさんの笑顔が思いっきり引きつる。

 「姫、どういう状況か本当に理解されていますか?」

 「ええ、しております。トラネコくんとレンちゃんが戻ってくるまで、この場を持ちこたえれば、あとは空の海の魔女さんが遠慮なくあの水の球体を消せる。そういうことですわよね」

 「それが一番、面倒くさいんですけどね……」

 「そこを何とかするのが、闇祓い協会騎士団総団長の腕の見せ所ですわ」

サリサちゃんの笑顔はフィルの営業スマイルとはまた違う……無邪気で可愛いんだけど、絶対に逃げられないような力があって、見ていて恐ろしい。

「私からも頼みたい。私も助力するので、二人が戻って来るまで、貴殿の力をどうか貸してほしい」

ソフィアがユイオスさんに頼む。ソフィアはオレのほうを見て、頷いた。

ソフィアはオレの気持ちを察して、ユイオスさんに頼んでくれたようだ。

と、そこにミルとマルがユイオスさんに近づき、

 「闇祓い協会騎士団総団長さんの実力、見てみたいなの〜」

 「闇祓い協会騎士団総団長さんの実力、見てみたいです〜」

両手を組んで、上目遣いでユイオスさんを見つめる。彼女たちの得意の「子どもの健気な視線ビーム」発射である。

 「命令拒否権があればしたいところなんだけど……こんなにたくさんの女性に頼まれてしまったら拒否は出来そうにないね」

仕方がないと、苦笑しながらユイオスさんは腕を組んで考え込む。

その時にどこからか、すごい怒っている視線を感じたが……気のせいだと思う、たぶん。

 「……まあ、この戦力なら、しばらく持ちこたえることは可能だと思います」

ユイオスさんは笑みを消し、真剣な顔つきになった。

 「今から私の言う通りに行動してもらいます。まずはティンくんとミコトさんに頼みたいことがあります。それから姫は……」

ユイオスさんから作戦を聞いたオレたちは、みんなにその作戦を伝えるために動いた。

トラネコ、レンちゃん……オレたちは二人が戻ってくるまで、ここで待っている。

だから、二人ともどうか無事で……

そう祈りながら、オレは走った。


番外編その1 頼もしい援軍 おわり 

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