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11周年記念物語「人魚姫の想い歌」
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ソフィアたちやユイオスさんたちに手短に状況を話した。

 「レンさんとトラネコくんがね……だけど、空の海の魔女の言う通り、これ以上、被害が出る前にさっさと消したほうがいいんじゃないかな」

さらりとユイオスさんが言った。

レンちゃんとトラネコのことを何とも思わない非情な発言をする彼にオレは不快にに思い、怒りを覚えた。

 「ユイオス、そんなことを言うものではありませんわ」

オレの胸の内を察ったらしいサリサちゃんがユイオスさんをいさめる。

 「あの二人がいなくなったら、キャラ投票の順位が上がって、姫も十位内入りが出来ますよ」

 「そんな卑劣なことはいたしません。消すとしたら、アルトさんのほうにします。彼がいなくなれば、わたくしが人間キャラで一番になれますから」

 「そちらのほうがカリナも喜びそうですね。毎日告白されて、付きまとわれることもされて大変困っていると言っていますし」

 「告白はともかく、女性に付きまといとは殿方としてあるまじき行為で許せませんわ。この件が片付いたら、前向きに検討いたしましょうか」

 「姫の仰せのままに」

恭しくサリサちゃんに頭を下げるユイオスさん。

どこまでが本気でどこまでが冗談なんだろう……二人のやりとりを見ていたら、さっきまでの怒りが半分、どこかへ飛んでいってしまった。

さて、とユイオスさんが言った。

 「空の海の魔女が助ける方法がないというなら、今すぐあの水の球体を消すべきだと私は思います。次元の挟間で起こった異常はすぐに対処しなければ私たちの世界や、コウキくんたちの世界に影響が出る可能性があると彼女は常に言っていますし。被害を最小限にするためにも、早急にすべきです」

ユイオスさんが消すべき、と言ったのはそういうことだったのか。

オレはレンちゃんとトラネコのことを考えていたが、彼は冷静に世界への影響のことを考えていた。

空の海の魔女からレンちゃんを取り込んだ水の球体が世界に悪影響を与える可能性は聞いていたが、レンちゃんとトラネコのことのほうを考えていて、世界への影響のことはあんまり考えていなかった自分の浅はかさと、ユイオスさんのことを誤解していた自分を恥じた。

確かにユイオスさんの言う通りなのだが……今、水の球体を消したら、トラネコとレンちゃんも消えることになる。

早く水の球体を消さないと、自分の世界に悪影響が出るかもしれないのはわかっている。

でも、やっぱり……たとえ、自分の世界のためとはいえ、あの二人ごと消すなんて、出来ない。

ふと思った。

空の海の魔女はどうしたのだろうと。

空の海の魔女はレンちゃんがあの水の球体にいても、消そうとしていたが……トラネコが水の球体に入って、だいぶ経つが水の球体はまだ消えていない。

見ると、空の海の魔女は水の触手をバリアで張って防いだり、魔法で消したりしていた。

ショーコさんはフォークを華麗に操り、余裕で水の触手を次々とぶった斬って消しているのに、空の海の魔女はオレたちと同じそうに苦戦していた。

精霊の中でも特に強い力を持つという空の海の魔女が苦戦しているなんて、おかしい。

その表情を見ると悲しそうな、痛みをこらえているような、そんな感じだった。

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