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11周年記念物語「人魚姫の想い歌」
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気がつくと、次元の挟間の森の中だった。

 「レンちゃん……!」

わたしとトラネコさんたちの周りにはコウキさんたち、クウさんたち、ショーコさんや精霊さんたち……皆さんがいた。

 「二人とも、おかえり」

コウキさんが温かく迎えてくれる。

 「……よかった……本当によかったです」

クウさんは笑っていたけど、声が震えていた。すごく心配をかけてしまったようだ。

 「二人とも無事、戻ってきたことだし、あとは……」

ショーコさんが上を見上げる。

上空には水の球体が浮かんでいた。どうやら、わたしはあの中にいたらしい。

 「レンちゃんが戻ってきたら、すっかり大人しくなりましたわね」

薄紫色を特徴的に結んだ女性、サリサさんが槍を地面に刺して、水の球体を見上げる。

その横に金髪の長身の男性、ユイオスさんがやってきて、サリサさんを守るように立った。

わたしがお店にいた時にいなかったお二人がどうして……他にもお店にいなかった人や精霊さんたちの姿もある。

どうして彼らがここにいるのか気になったが、今は聞ける雰囲気ではなかった。

 「また攻撃をしかけてくるかもしれません。大人しくなった今のうちに、空の海の魔女にあれを消してしまいましょう」

あれとは、あの水の球体のことなのだろう。けど、あれは……

 「待ってください! 『彼女』を消さないでください!」

わたしが皆さんにそうお願いすると、皆さんは驚いた顔した。

 「『彼女』って……あの水の球体のことか?」

戸惑った様子でたずねるコウキさんにわたしは頷いた。

 「はい……『彼女』はわたしと同じなんです」

 「……レン、気づいたのかい」

空の海の魔女さんは『彼女』が何者なのかわかっているようだ。

 「あの水の球体……『彼女』はわたしと同じ、人魚さんです」

皆さんはさらに驚かれた。

 「レンちゃん、どういうことなんですか?」

 「……『彼女』は想いが報われなかった人魚さんなんです」

あの水の球体、『彼女』の中にいたことで、わたしは『彼女』の想いに触れて、『彼女』が何者かを知った。

『彼女』には好きな人がいた。

けど、その人には別の好きな人がいた。

その人が自分を好きになってくれなくてもいい。好きだと想うこの気持ちだけでいい。

そう思った『彼女』は自分の想いを告げることはしなかった。

好きな人が愛する人と幸せになってくれればいい、とその幸せを願った。

心からそう願っていた。だけど……

心の奥では想いが報われなかったことが悲しかった、苦しかった。

その苦しい気持ちが、『彼女』になってしまったのだ。

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あきゅろす。
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