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11周年記念物語「人魚姫の想い歌」
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ドアを開いたのはカリナだった。

なぜかいつものオレンジ色の服ではなく、別の服を着ていた。しかも見たことがない服だ。

 「あんたら、店の前で騒ぎ過ぎ。レンちゃんも待っているし、さっさと中に入りなさい」

ちょっとむっとくる言い方に文句を言ってやろうかと思ったが、わざわざドアを開けて待ってくれているので、言う通りにお店の中に入った。

 「いらっしゃい&待っていたわ、トラネコくん」

ショーコさんが笑顔でいつものように迎えてくれる。

待っていた、とはどういう意味だろう。

 「レンちゃん、トラネコくんに見せてあげたら?」

ショーコさんがそう声をかける先に、クウとミコトがいて(カリナと同じく、いつもの服じゃなく別の服を着ている)、その間にレンがいた。

ボクと目が合うと、ロングスカートをはいているミコトの後ろに隠れてしまった。

 「レンちゃん、恥ずかしがらずに見せてみましょう。とっても可愛いですから」

クウがしゃがんで、優しい笑顔でミコトの後ろに隠れてしまったレンに話しかける。

しばらくして、ゆっくりとレンが出てきた。

人間の姿でいつも服、じゃなくて……いつもよりも可愛いらしい服を着ていた。

リボン、フリル、スカート……お姫様とは違うが、可愛らしい服を着ているレンはいつも以上にとっても可愛かった。

 「……あの、どうでしょうか?」

可愛い。可愛いに決まっている。可愛いという言葉しかない。いや、可愛いという言葉はレンのためにあると思うくらい可愛い。
 
 「……トラネコさん?」

不安そうにレンがボクを見る。

 「何か言ってあげたら?」

何も言わないボクにブータがたまらず言う。

可愛いと言いたいのだが、さっきの息の乱れが戻ってきたのと、心臓の鼓動がさらに早くなってきたのとで、言葉が出したいのに出てこない。

 「レンちゃんは普段から可愛らしいけど、その服を着たら、さらに可愛くなったよな。ショーコさんの言う通り、こんな可愛い子を見たら、男は放っておくはずがないな〜」

アルトのその言葉にボクの心は一瞬で冷めた。そして、ある思いががふつふつとわいてきた。

 「……いくない」

 「……え?」

 「可愛くない!」

気づいたら、大声で言っていた。そのあとは止まらなかった。

 「ふん、それくらいで可愛くなるなら大したことない。全然全く可愛くなってない。可愛くなるなら、お姫様みたいな豪華なドレスを着るなり、宝石とかで豪華に着飾るくらしないとな」

言って、レンを見て……ボクは目をそらせなくなった。

レンは今にも泣きそうな顔をしていた。

声をかけるより前に、レンは走って、店の外へ出て行ってしまった。

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