・9
店には真紀たち以外に客はいなかった。
フロアにいるのは真紀と佳奈、そして先程挨拶をしてくれた男性が一人。
真紀がメニューを取り出している間、向かいに座った佳奈は探るような目付きで店内を見回していた。
どうしたの、と真紀が尋ねるより先に、佳奈は大きなため息をつき、頬杖を突いた。
「なぁんか拍子抜けー」
あからさまな悪態に、真紀はちらと男性を見てから佳奈に話しかけた。
「ちょっと、どうしたの急に」
大体自分から誘っておいてその態度はないだろう。真紀は佳奈の豹変ぶりに嫌なものを感じた。
「だって、この喫茶店にかっこいーバイトがいるって聞いてきたのに」
「……は?」
呆然とする真紀の前で、がっかりー、と佳奈は更に悪態をついた。
「……ちょっと待って? もしかして、このお店に来たのって、その人に会うため?」
「それ意外何があんの」
眉間に皺を寄せながら尋ねる真紀に、さも当然と言わんばかりの佳奈。真紀は大きくため息をついてうなだれた。
[*back][next#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!