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「ごめん」
「いいよ。私は別に。にしても、卓哉くんて妙なところきっちりしてるよね」
真紀の言葉に、卓哉が首を傾げる。
「だって、映画断るのだってメールひとつ送れば済む話だし。なのにわざわざロビーまで来てくれたんでしょ?」
「それは! だって約束したのに、しかも俺から誘ったのに、顔見て断らないなんて、男じゃないし……」
言いながら俯く顔はだんだん赤くなっていく。
「それに」
「それに?」
「先輩の顔が見たかったんです! じゃ、俺バイトなんで! また明日!」
真っ赤な顔で立ち上がった卓哉は、走るように去って行った。
残された真紀も、言われたことをだんだん理解して徐々に顔が赤らむ。
(あ、バイト頑張ってって言うの忘れた)
振り返り卓哉を探すが、もうそこに姿はなかった。さすが、バスケ部だけあって足は速い。
諦めて椅子に座り直すと、さっきまで卓哉が座っていた椅子に別の人が座っていた。
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