・18
「違うの?」
「それならまだよかったかもね」
含みのある言い方に、佳奈は眉を寄せた。
自嘲するように、真紀はぽつりぽつりと話しはじめる。
「付き合ってないの。私の片想い」
「……告白は?」
「……してない。してないけど、ふられた」
「どうして?」
「彼女いたから」
少し目を伏せる。
そうだ、ふられた。もうどうしようもないのだと自分に言い聞かせる。
「……そっか」
「ちょっと、どうしたの? 佳奈らしくない」
いつになくしんみりとしてしまった佳奈に逆に喝を入れる。
笑う自分が、遠くのもののように感じられた。
明日も学校で。
そう言って佳奈と別れた帰り道。自宅に向かうバスの中から、空を見上げた。
夕日が沈み、紺色が混じった空。眩しかったオレンジが、暗く沈んでいく。
ふと、ため息がこぼれた。
強がりなんかじゃない。佳奈に話したことは全て真実であり本心だ。
それなのに、さっきから胸につかえるこの痛みはなんなのか。
不安定な心を打ち消すように、真紀はそっと目をつむった。心地よいバスの震動が、眠りの世界に誘う。
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