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「呆れた……」

「呆れたって何よ」


 真紀の反応に不満たっぷりの佳奈が反論しようとすると、突然第三者の声が割り込んできた。


「ご注文、お決まりですか?」


 驚いて顔を上げると、やわらかな笑顔の男性。小さなフレームの眼鏡の奥で微笑む目には、無意識にこちらも笑顔になってしまいそうな力があった。


「あ、ウィンナーコーヒーひとつ。佳奈ちゃんは?」

「同じのでいい」

「すみません、じゃウィンナーコーヒーふたつで」

「畏まりました」


 男性が厨房に入って行ったのを見計らって、佳奈がずいと身を乗り出す。


「ちょっと、さっきのは聞き捨てならないんだけど?」

「だってそうでしょ? わざわざ男の子見るためだけにお店来るなんて。大体、佳奈ちゃん彼氏いるでしょ」


 すると佳奈は長い髪を掻き上げて得意気に言う。


「それはそれ、これはこれよ。デザートは別腹っていうでしょ」

「意味分かんない」


 佳奈の男好きは今にはじまったことではない。大学入学当初から、佳奈の周りにはたくさんの男がいた。
 親しげな人から、服従しているような人まで。その中の誰かが彼氏なのか、と聞いたら、全く別の人を紹介された。

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