キセキの秋桜
58
「……。」
「沢田さん」
「ツナ君、それに皆」
「炎真と……えっ、ユニ!?」
「古里にユニ!?」
「後何で、沢田が一緒にいるのな」
ナミモリーヌ迄案内している途中、綱吉、獄寺、山本の三人と遭遇していた。空は手を繋ぎながらも、まるでユニと炎真を守る様に、一歩前へ出ながら綱吉達(正確には、獄寺と山本の二人だけ)を睨み付けていた。
当たり前だが、空と山本、獄寺間の雰囲気は悪かった。綱吉はやはり自分は嫌われているそう思っていた。
空に必要な物は何度か持って行ったりはしていたが、一度も目が合わなかったし、お礼も言われた事もなかった。しかし、綱吉ふとした違和感に気が付いた。
(あれ? ユニと手を繋いでる。しかもユニと炎真を守ろうとしてる? 前はそんな事なかった筈なのに……)
(もしかして、少しだけ変わりつつあるのかも。今、空が何を思っているのか分かる)
綱吉が目の前の双子の片割れが今、何を思っているのか分かった。ふとした違和感も、何時の間にか消えていた。
この二人には、手出しはさせない
この二人は、私が絶対に守る
綱吉は空からそんな感情を感じ取った。そしてもう一つ感じ取った事があった。
お兄ちゃんは、多分悪くない。……けど、まだ信用出来ない。
綱吉はそう感じ取っていた。いい方向へと少しずつ変わりつつある事に、綱吉は内心嬉しくなった。
例え、まだ信用されていなくても。
「古里もユニもソイツと関わんな。酷ぇ目に遇うぜ」
「そうなのな。だからさ、俺達と一緒に遊ぼうぜ!」
「(空は、何も悪くないのに……)」
「でも、」
「……。」
獄寺と山本が少しずつ近付いて来ると、炎真とユニは少し困った顔を二人に向けた。そんな二人の雰囲気を感じ取ったのか、空は掛けていたショルダーバッグから空いている方の手で、器用に素早く拳銃を取り出し安全装置は抜かないままに、獄寺と山本の二人にソレを無表情で向けた。
勿論、そんなモノで二人が怖じ気つかない事も、引く事もしない事を知りながら。
「……それ以上此方に来るな」
「ンなもん怖かねぇよ」
「オモチャか?」
「ンな訳あるか!! 本物の拳銃だよ、この馬鹿!!」
「空……」
空は獄寺と山本に拳銃を向けたまま、無表情で二人を睨み付ける。綱吉もまさかそんなモノを双子の片割れが持っているとは思っていなかったのだろう。
最初は驚いていたが、綱吉は足元を見て空が本気かもしれないと思った。前に骸と戦っていた時にレオンが吐き出したブーツだったからだ。
どうりで、見覚えがあると思った。
「……早く失せろ」
「あ゙ぁ? 喧嘩売ってんのか、テメェ」
「穏やかじゃないのな」
「……。喧嘩売ってんのはテメェらだろうが」
「ちょ……三人共……」
「こ、此処で喧嘩はダメだよ!」
ユニと手を繋いだまま、空は未だに威嚇し拳銃を獄寺と山本の二人に向けていた。それを止めようと綱吉と炎真の二人が声を掛けても、互いに譲る気はないらしい。
しかし意外にも先に折れたのは、空の方だった。
「……。」
「んだよ」
「やらないのな?」
「空?」
「空ちゃん?」
「……時間の無駄。行こう」
「はい」
「またね、ツナ君」
空はそう吐き捨ててて、ユニと炎真と共にその場を去って行った。同時にユニと空の二人が小さく言葉を呟いて行ったのを、三人は訊いて驚いたのだった。
──お前ら何か一生信じない。
──空さんの事をどう思っていますか?
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