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キセキの秋桜
69


「……。」

「お帰り、空ちゃん」

「……。」




あれから、真っ直ぐ帰って来た空は炎真に迎えられたものの、何時も通り何も言わずに部屋へと向かった。酷い傷を負ったまま。





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(また此処? でも、何で?)

(もしかして、寝てしまったって事?)




「疲れていたんだろう」

「(疲れて何てない)」

「オレに嘘を吐く必要何てないさ」

「……。」




また知らない空間に居た空は、姿の見えないその声に何処かで安心感を感じていた。声だけで、姿も見えない筈なのに。

気を許してもいいと、さえ思えてしまっていた。其れでも目を開けようとは思わなかった。




「……。」

「今はゆっくり休め」

「(そんなの、分かってる)」

「……。」




空はそのまま目を閉じたまま、身を任せたのだった。同時に意識が遠退くのを感じながら。





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「空ちゃん?」

「?」

「ご飯、出来たよ?」

「行きましょうか、空さん」

「(コクン)」




此処最近よく見る夢の様な、記憶の様なモノが気になりながら何時ものように炎真とユニの後に着いて行った。




「(此処最近見る、あの夢は何なんだろう。知っている筈なのに……何でか凄くモヤモヤする)」

「空さん、また酷い怪我ね。後でちゃんと手当てしないと」

「本当に日に日に酷くなっているな」

「心配だな」

「女の子に酷い事するよね〜」




そんな周りの会話も耳に入って来ない程に空は考え込んでいた。謎の声と、謎の約束らしき言葉を思い出していた。




「(思い、出さないとダメな気がするのに……)」

「早く食べちゃいなさい」

「「「「……はーい」」」」

「(分からない)」




そんなこんなで、夕食は済んだのだった。




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