キセキの秋桜
4
イジメを受け始めてから早くも二週が経ち、前よりも状態は更に酷いものになっていた。
ドゴッ
ドスッ
「グッ……うっ……」
「お前よく学校に来れるよな」
バシンッ
「っ」
「何でそんなにのうのうとしてられんだよ」
「私は……何もしてない……」
「ふざけた事言ってんじゃねぇよ、このアマ!!」
ドスッ
「ぐあっ……!」
「テメェがのうのうと学校に来てから、俺らが安心出来ねぇんだよ!」
「お前さえいなけりゃ、こっちは安心でんきんだよボケが!」
ゲシッ
ドスッ
ドガッ
「ゲホッ、う、ぐっ……」
「はっ、ざまぁみろ」
「行こうぜ」
「あぁ」
殴るだけ殴った男子生徒達は、空を放置してそそくさと教室へと戻って行った。殴られた本人は冷たいコンクリートの上(屋上にいる為)で静かに涙を流した。
「うっ……グスッ……」
(何で私殴られてるんだろう。何で私、泣いてるんだろう。悲しいから? 悔しいから? 辛いから? 分からない……もう何もかも分からない……)
「君、そんな所で何してるの。もう直ぐ授業始まるんだけど」
「……。(この声は……雲雀さん?)」
「ねぇ、訊いてるの」
「……。」
(雲雀さんは元々助けてなんてくれない。期待しないし、助けてとも言わない。この人は、殴ってくる)
グイッ
「っ」
「君、あの草食動物の双子妹? ふぅん」
「……。」
雲雀に胸ぐらを掴まれ無理矢理立たされた空は、雲雀の目をジッと見つめていたが、暫くすると逸らした。雲雀もまた見つめていたが、気に入らなかったのか、あろう事かそのまま胸ぐらを掴んだまま屋上の出口へ向かった。
「風紀を乱さないでよね」
「……。(乱した覚えなんてない)」
「君がどうなろうと、僕には関係無い」
(結局この人も元々は暴力的な人か……。だって、冷たい目をしてるし……私一人が消えても、動じないって顔してる)
「じゃあね」
「……。」
雲雀は階段の所まで来ると胸ぐらを掴んでいた手を離した。重力に添うように空の体はゆっくりと、スローモーションの様に落ちていく
鈍い音がした後、ドンッと重い物が落ちた音が辺りに響いた。そんな様子を見下す雲雀の姿があった。
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