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キセキの秋桜
49


─放課後─




「……。」




(何か、知らないアドレスが何件か入ってる。何で?)




空が一人帰り支度をしていると、携帯(ドライブモードにしている。※中学生が学校に携帯を持って来ちゃダメです)にメールが何通か来ていた。殆どの生徒は帰っているので、携帯を弄っていても問題はなかった。

少し面倒くさいと思いながら、携帯を開いた。




「お兄ちゃんとリボーン君。またかよ。と、桃井 さつきって……あぁ、あの時ナミモリーヌに居た」




メールを一通り読み、携帯を閉じた。携帯を鞄の中へと放り込んで、空はメールの事を気にしなかったかの様に、教室を後にした。




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「空ちゃん遅いね……」

「少しは落ち着けよ、さつき」

「だって……」

「はぁ。って、来たぞ……っ!?」

「? 青峰君?」




並中の校門の所で、帝光中の制服を着た青峰と桃井が空を待っていた。何故彼らが此処に居るのか、それは赤司の指示+自分達の意志で此処に居た。

二人が並中に居るのは、空を部活へ連れて行く為でもあった。そして、中々現れない空に愚痴を零し始める桃井に、呆れた様な表情をする青峰は、特に意識せずに校舎の方を見た。

野性児の堪か、青峰自身の目がいいのか、見覚えのある小さな影が現れた。然し、遠目でも分かる位ボロボロな姿で現れた少女に、青峰は言葉が出なかった。

青峰が急に黙り込んだ事を不信に思った桃井は、青峰がジッと見ている方を見た。そして、見てしまった桃井も言葉が出なかった。

イヤ、見なければよかったと、後悔した。




「……っ、
(あんなタイミングで雲雀さんに会うとか最悪)」

「空ちゃん!」

「沢田!」

「……っ、本当に居たんだ。何の用?」




空はメールを見ていて知ってはいたが、本当に居るとは思っていなかった。保健室に寄っては来たものの、あちこちに湿布やら包帯やらが巻かれているのが痛々しかった。

青峰と桃井は、こんな痛々しい姿で現れるとは思ってもみなかった為、少し申し訳なくなってしまった(主に桃井)。痛々しい姿の本人は慣れているらしく、無表情を貫き通しているが。

変わらず冷たい目をした空は、青峰を桃井を睨み付ける様に数秒見た後、並盛旅館のある方へと歩き始めた。歩き始めた空の腕を遠慮がちに掴んだのは、意外にも青峰だった。




「おい、ちょっと待て」

「っ、何」

「ちょっと、青峰君!」

「……用が無いのなら、離して。帰る」

「あの……空ちゃんに着いて来て欲しい所があるの」

「……何で私なの。他にも居るでしょ」




桃井が遠慮がちに言葉を掛けると空はあからさまに嫌そうな顔をした。桃井も青峰も予想はしていたが、此処まで嫌そうな顔をされると少なからずショックだった。

恐らく空は自分達に酷い事をされると思っているのだろう。だから、頑なに動こうともついて行こうともしないのだろう。

そして遂に、青峰の限界が超えた。




「はぁ……面倒くせぇ……」

「青峰君?」

「? ……!? 離せ! 下ろせ!!」

「ヤダよ。ジッとしてねぇと落とすぞ」

「やれるもんなら、やってみろよ」

「ちょっと、乱暴はしちゃダメだって赤司君に言われてるでしょ!」




幾ら桃井が言っても、青峰は空を下ろす仕草を見せなかった。それどころか、お構い無しに歩き出した。

俵の様に担がれている空の顔は、明らかに苛立ちと痛みに耐えている様だった。桃井もそんな表情の空を見たくはなかったが、仕方がないと思いながら内心では「ごめんね……」と謝りながら、二人は帝光中の方へと歩いて行った。




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