キセキの秋桜
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ある日の帝光中体育館。練習を終えたキセキの世代達は珍しくバスケ部部長である赤司に呼び止められ、何らかの相談をし始めていた。
「で、何なんだよ。俺達を呼び止めてよ」
「赤司っちが呼び止める何て珍しいっスね」
「何なのだよ」
「ねぇ〜如何したの、赤ちん」
「何かあったんですか?」
「部長、本当に如何したんです?」
「お前達を呼び止めたのは、あの時の少女の事だ」
「「「「「あの時の少女?」」」」」
「もしかして……沢田 空ちゃんの事ですか?」
「あぁ」と赤司が微かに笑みを浮かべると他のキセキ達は、納得がいったような表情をした(黒子だけは、相変わらず無表情だけど)。桃井に至っては、嬉しそうにニコニコしている始末。
だが、何故今空の事が出て来るのか分からず、直(す)ぐに表情が変わる。
「何故今、その話題が出るのか分からないって顔だな。」
「「「「「!」」」」」
「空さんが如何かしたんですか?」
「お前達は沢田 空に何も感じなかったのか?」
「「「「「(((((何かって、何?)))))」」」」
赤司の言う言葉の意味が分からず、首を傾げるキセキ達に桃井だけは、何と無く赤司が言いたい事が分かる気がした。でも、桃井は違うかもしれないと思い、言葉を飲み込んだ。
だが赤司がその瞬間を見逃す筈はなく、仕方ないといったように、言葉を紬出す。
「沢田 空は何かある。だがその前に……恐らく彼女はイジメられている」
「「「「「「!?」」」」」」
「イジメ、ですか」
「じゃあ、あの時の痣は……まさか」
「テツヤと涼太が思っている事は、おそらくあっているだろうな」
「「!!??」」
黒子と黄瀬はあの時の痣の事を思い出して、まるで自分の事のように酷く青ざめた。それを見た他のキセキ達は、二人の顔を見てそんなに酷いものだったのかと思った。
「テツヤ、涼太。今の僕達にはまだ未熟だが、力を付けてくれる人達が居るだろう?」
「「!」」
「そうよ! テツ君もきーちゃんも、ううん……私達は一般人のようで一般人じゃないじゃない」
「そうでしたね」
「そうだったっスね!」
彼らは一般人でバスケ選手でもあり、もう一つの顔、裏の人間でもある。力を付けてもらっている相手は、綱吉達も空も炎真達も知っている相手だ。
「まさか、アイツらに力を付けてもらう羽目になるとはな」
「だが、彼らが強いのは確かなのだよ」
「小さいのにねぇ〜」
小さいと言う紫原にキセキの世代全員は、頷いた。小さな彼らが少なからず協力してくれる事に感謝しているのは確かだった。
特にリボーンは空に少しでも出来ればいいと、思っているからこそ、彼ら──最強の赤ん坊であるアルコバレーノ達に頼み込んだ位なのだから。
「私、空ちゃんの笑顔が見たい。だから、強くなりたい」
「桃井さん、」
「そんなん」
「当たり前なのだよ」
「面倒だけど〜」
「もっともっと強くなればいいんスよ!」
「彼らには、感謝しても仕切れないな」
キセキ達の意志は強いものがあった。マフィアである綱吉と空に関わってしまった以上、もう一般人でいる事も戻る事も、バスケが出来なくなってしまうかもしれないと分かっていて、彼らは「ボンゴレファミリー」に事実上入った事になっている。
綱吉は本当は嫌だったが、その事を知っていて、綱吉と友達になった。綱吉だけではなく炎真やその他の子達とも、仲良くなっていったのも事実だった。
まぁ、多少は時間が掛かったが。
「空ちゃんが笑ったら、きっと綱吉君が笑った時と同じ感じな気がするの」
「それはボクも思います」
「だって、ツナとは双子っスよ! 絶対可愛いに決まってるっス!!」
「黄瀬、お前その発言変態みてぇだぞ」
「変態!? 俺変態じゃないっスよ!!」
「「「「……。」」」」
「皆してなんでそんな目で見るんスか!?」
この時彼らは知らなかった。力を付けてくれているアルコバレーノと、もう二人客人が来ている事を知らなかった。
勿論、綱吉達も知る筈もなかった。
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