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キセキの秋桜
43


「バイバーイ」

「バイバイです」

「……バイバイ」

「バイバーイ!」

「……バイバイ」




あの後長々と話し、結構な時間が経ち皆と、正確にはハルと桃井の三人だ。




「楽しかったですね」

「そうだね」

「……。」




ハルと桃井の二人は会話しながら、歩いている。空は一人会話に参加する事もなく黙々と歩いていた。

超直感が働いている事を知りながら。




「(何だろう、なにか嫌な予感がするんだけど)」

「じゃあ、私こっちなんだ。またね!」

「はい、また!」

「……。」

「空ちゃん、また遊ぼうねー!」

「……。」




桃井と別れたハルと空は、また歩き出した。会話もなく、ただ足音だけがする。




「……。」

「……。」




会話もないまま、二人は橋の所に差し掛かった時、ハルがおもむろに口を開いた。




「あの……空ちゃん」

「……何」

「噂で訊いたのですが……本当にイジメてるんですか?」

「……。」

「誰をイジメているのかは、分からないですけど……ハルは空ちゃんがそんな人だって知りませんでした!」

「……誰に訊いたのかは知らないけど、そんな噂信じてるんだ?」

「!」




ハルはそれ以上言葉が出て来なかった。何故ならば、空の瞳に浮かぶ、どうせ貴女だって、私を疑ってるんでしょ? そんな瞳をしていたから。

そして空はそのままハルをその場に残して、並盛旅館がある方へ歩いて行った。ハルは一人橋の上で、空の背中を見つめたまま固まっていた。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「……ただいま」




小声でそう言うと、靴を脱ぐなり使わせてもらっている部屋まで歩いて行った。その時、アーデルハイトが心配そうに見つめていたとも知らずに。




─旅館in部屋─




「はぁ」




手を洗い部屋に戻って来た空は、一人ため息を吐き、ゴロリと寝転んだ。相変わらず無表情で。




「ハルちゃんも私の事信じてなかった。ハルちゃんは信用出来ない」




独り言を呟いた後身体を起こし、何時も皆が居る寛ぎスペースへ移動する事にした。




ガラッ




「お帰りなさい、空さん」

「空ちゃんお帰り」

「お帰りー」

「結局、お帰り」

「お帰り、空さん」

「……お帰り」

「空ちゃんおっ帰り〜」

「……。」




皆に迎えられても空は無表情で返事はしなかった。だがシモンファミリー達は、何時かまた話してくれる時が来ると信じている為、特に何も言わなかった。

空は皆が囲むテーブルを見て、もうすぐご飯が出来るんだと分かると、部屋には戻らず開いているスペースに静かに座った。




「空ちゃん楽しかった?」

「……。」

「何々? 空ちゃんどっか出掛けてたの〜?」

「……。」




空が座るのと同時に、炎真とジュリーが話し掛けて来た。だが、やはり答える事はなかった。

無視したくてしているわけではないが空自身、話そうとしないだけだ。




「出来たわよ」

「あ、ご飯出来たみたいだね」

「ヤッホーイ!」

「……。」




アーデルハイトの一言で皆は、テーブルを囲み始める。そして一斉に「いただきます!」と言い、晩ご飯を食べ始めた。


それが、今の所の空の日常になりつつあった。




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