キセキの秋桜
36
─翌日─
「……。」
(なんで、こうなった)
翌日、包帯を痛々しく巻いた空は病院を退院し、並盛旅館の前に綱吉とリボーンの二人と居た。空自身、並盛旅館に誰が居るのか知っている為、険しい表情になっている。
「なんで此処なわけ」
「空今家に戻れないだろ? だから、一時的に炎真達のところでお世話になるから」
「いっそのこと、私を此処に置いていけば? そしたらママ達も安心じゃない」
「何言ってる。一時的だけだって言ってるだろ。ママン達は、俺達が説得する」
「説得なんて必要ない」
空は何も無い瞳で、並盛旅館を見つめる。優しい笑顔も、優しい雰囲気も、温かい瞳も、閉ざしてしまった心も、今の綱吉には何も出来ず、ぎゅっと握り拳を作った。
リボーンも綱吉の気持ちを知っているからこそ、悔しい気持ちが一層強くなった。
ガラガラ
「おはよう」
「……。」
「邪魔するぞ」
「あ、ツナ君、空ちゃん、リボーン君おはよう」
中に入ると、相変わらず静かで人気はなく、偶々入り口付近を通りかかった炎真が、笑顔で綱吉達に挨拶を返す。空は、無表情だったが。
「今日から空を宜しくね」
「うん、空ちゃんの事は任せて!」
「……。」
「空が必要な物は持って来てやる」
「……。」
「空、また後でね」
笑顔で旅館を後にする綱吉とリボーン。二人が去って行くのを、無表情で見る空。後ろで見つめる炎真。
二人が去って数秒経った頃、炎真は空を部屋へ案内した。
──────────
「此処を好きに使ってくれていいよ。アーデルも皆も空ちゃんの事、凄く心配してたんだよ」
「……。」
「あ、そうだ! よかったら、朝食一緒に食べようよ」
「……いらない」
「でも……」
「いらない」
「朝食は食べないとダメよ」
「アーデルハイト……何時の間に?」
「今さっきね」
「……。」
何時の間に居たのか、アーデルハイトが部屋の入り口に立っていた。炎真と空は、二人同時に振り向いた。
「思っていたよりも、酷い怪我なのね……」
「アーデル……」
「……。」
アーデルハイトは空を見るなり、悲しそうな瞳で見る。空は冷たい眼差しで、アーデルハイトを見ている。
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