キセキの秋桜
30
「名乗るなら、自分から……では?」
「ッチ、俺はリボーンだ」
「沢田、綱吉です……」
『えっ? 沢田?』
リボーンの鋭い黒曜石の様な瞳にも怯まなかったキセキ達は、逆に警戒した。その中でも赤司だけは逆に訊き返し、キセキ達と綱吉とリボーンはお互いに名乗る事になった。
キセキ達は綱吉の名字と容姿訊き見て、驚いた。何故なら、空と同じ名字で髪の色、クリッとした瞳、体付き、身長、温かい雰囲気、まるでそこに空が居る様な錯覚に陥りそうになったからだ。
病室に眠っている少女の筈が無いのに……間違えそうになったのだ。それ程綱吉と空は似ていた。
「ねぇ沢田くん、一つ訊いてもいい?」
「何ですか?」
「空ちんとは兄妹?」
「はい。でも、兄妹というより双子≠ネんです……オレ達」
「瓜二つだぞ」
綱吉の発言にキセキ達は確信と納得した。どうりで間違えそうになった訳だ。綱吉には失礼だが、可愛いと思ってしまった。
「けどよ、だったら如何してアイツは傷と痣だらけなんだ」
「確かにそれは気になるのだよ」
「それは……」
「訊く覚悟、あんのか?」
「リボーンさん、それ如何いう意味ッスか?」
「ソラもツナも俺も血生臭い世界の人間だからだ」
『!?』
キセキ達は、血生臭い世界と訊いて全身の血の気が引いた。そして、自分達の考えは砂糖の様に甘い考えだったかもしれないと。
リボーンは至って本気の瞳をしていて、綱吉は自分達の事に関係の無い赤の他人で一般人≠巻き込んでしまったと、顔面蒼白になり如何しようもなく申し訳なさを感じた表情をしていた。
だが、キセキ達は此処で引く訳にはいかなかった。空に関わった以上、彼方(あちら)の世界の人間と関わったのと同じ事だと覚悟を決めたから。
「覚悟を決めたみてぇだな」
「すみません。巻き込んでしまって。本当は、巻き込みたくなかった……きっと空だってそうした筈ですから」
「ツナが気にする事ないッスよ」
「そうなのだよ」
「じゃあ聞こうか、貴方達と彼女の事を」
赤司の一言で皆は、真剣な表情になる。流石キセキの世代と呼ばれるだけはあると言える。
一向は病室の前から、病院の中にある休憩スペースへと移動した。リボーンの話を聞くた為に、一人の少女を助ける為に。
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