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キセキの秋桜
26


(何なのだよ、この感じは)

(何だろ、この感じ……別に興味ないけど、何か気になる)

(何だよコイツ。変に気になるな)

(やっぱりこの子、何か事情があるのか?)

(思いっきり頬叩いちゃったけど、何か辛い事でもあったのかな……)




キセキ達は、初対面の空に対して敵対心は軽くなっている様な気がした。それに黄瀬宅に呼ばれた時、目の前の少女は苦しそうに眠っていたので、彼らは少女の名前を黄瀬と黒子には訊いていない。

しかし、少女が如何いう経緯(いきさつ)で黒子と黄瀬の二人で黄瀬宅に連れて来たのか等、色々と訊いて知っていた。ただ、身体の痣の事は、訊いた今でも信じられずにいた。

そんな中桃井が気になっていた空の名前を訊いてみる事にした。




「そういえば、貴女の名前訊いてなかったら、訊いてもいい?」

「……。」

「ダメ、かな?」

「……。」




ソファーに苦しそうに横たわる空の前にしゃがみ込み、髪がかかって見えない顔を覗き込む様に顔を見る。空は桃井に顔を覗かれているのを知りつつも、言葉を紡ぐ事をしない。

心の中から信じ切っている訳でも、赤の他人に名前何て教えるつもりも無いといった感じで、話そうとしない。




「ダメだよね……」

「……。」

「その子、沢田 空ちゃんっていうんスよ」

「何できーちゃんがこの子の名前知ってるの?」

「……生徒手帳、勝手に見たの?」

「え、あ、スンマセンッス……」

「ボクも見ました」




何で勝手に見たんだよ、空は内心そう思った。怒っている顔をするが、本気で怒る様な事はしなかった。

桃井達五人は、少女の名前を知っても尚(なお)驚く事はなかった。キセキ達七人は少女に何があったのか、何故酷い怪我をしているのか、気持ち悪さを覚える程の痣があるのか、何故立っているのもやっとな筈なのに雨の中一人でいたのか、空に対して疑問が生まれてばかりだった。




「君の事を話してくれないか?」

「……。」

「僕達は君の事を知りたいんだ」

「……知って如何するの」

「そうだね、如何もしないさ」

「あっそ。でも残念。話すつもりはない」




ソファーに横たわったまま空は赤司の顔を見る。赤司も空の顔を見る。

お互いに見つめあったまま無言の会話(?)が続く。気まずくもなく、楽しげでもない空気に携帯の着信音が響く。




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あきゅろす。
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