キセキの秋桜
24
時間が経つに連れて、空は夢の中から覚醒しつつあった。浮遊感が段々と身体中の痛みに変わっていき、現実に引き戻されていく。
「ん」
『あっ』
「?!」
起き上がろうと上体を上げたのと同時に、酷い腹部の痛みと一瞬呼吸が出来なくて息を吸おうとして逆に噎せ返ってしまった。
「っ、ゲホッ……うっ……」
「大丈夫ですか?」
パシッ
「……。」
「触んないで」
「身体は大丈夫か? 随分呼吸し辛そうだが……」
「……アンタに関係無い」
目が覚めて黒子が心配そうに声を掛け、背中を擦(さす)ろうとした手を勢い良く弾き返した。黒子の次に声を掛けて来たのは、赤司だったが直ぐに関係無い、と返した。
空は何時の間にか着替えさせられていて(黄瀬の服を着ているのでブカブカ)、今の格好は、Tシャツ(ちゃんと下着着用)にスェットという格好だった。それに加え、見知らぬ家とぶつかった時に見た人達が居て、恐怖よりも冷静に自分は誘拐されたのかと思った。
(此処何処? 私どうしたんだっけ? あ、そうだ……ママに反省する迄家に入れないって言われて、飛び出して来たんだっけ。別に帰るつもりもないし、帰る場所なんて……)
「無理しちゃダメよ!」
「放っておいて」
「身体を起こせない位痛むのだろう?」
「煩い」
「無理しちゃ余計痛いだけじゃん。大人しくしてたら〜?」
「黙れ」
上から順に桃井、緑間、紫原に声を掛けられるが、今の空にとっては、どうでも良かった。身体の痛みも呼吸し難いのも目の前の人達も自分にとっては、敵・信用・信頼・信じる事の出来ない相手でしかなかったから。
「お前、俺達が親切にしてやってんのに礼も無しか?」
「親切? バカみたい」
「何だって?」
青峰と赤司は、空の態度に苛立ちと違和感を感じた。瞳(め)を見て話してはいるが、生気を感じなかった。
生きる事も死ぬ事も如何でもいい、ただ放っておいて欲しい。そんな瞳をしながら、何か違和感のあるメッセージの様なものを青峰と赤司は感じた。
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