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キセキの秋桜
20


「はぁっ、はっ、」

「息しづらい……?」

「っ、」

「黒子っち!」

「黄瀬君……」




黄瀬は慌ててタオルを持ってリビングへ戻って来た。黒子は呼吸がしづらそうな空に困惑した顔になっていた。

そんな黒子を見て、黄瀬もまた困惑した。




「っ!ぁ、」

「如何しましょう……」

「如何しましょうって言われても、取り敢えず拭くしかないッス」

「……如何やって拭くんですか?」

「え」




黒子にそう言われて黄瀬は硬直した。黒子も自分も男の子で、苦しそうにしている子は女の子だと気付いた。

拭くという事は「脱がす(やらしい意味は無い)」という事に繋がって来る訳で。つまりは裸を見るのと同じ事。

となると、自分も黒子もその子の身体を必然的に見てしまう訳で、空になんと言い訳すればいいのか考えてしまう。

正直に言えばいいだけなのだが、今の彼女には言い訳等無意味かもしれない……そう思った。




「黒子っち、覚悟を決めるしかないッス」

「何の覚悟ですか?」

「だーかーらー」

「?」

「はぁ……もういいッス……。取り敢えず、風邪引いたら大変ッスから拭くッスよ」

「はい」




黄瀬と黒子はタオルを持ち、取り敢えず手等を優しく拭いていく。




「湿布、取っても大丈夫ですかね?」

「大丈夫じゃないッスか?」




黄瀬は何も気にせずサラリといい言い退けた。黒子も黄瀬に許可を得た為、気にせず雨で濡れた為に剥がれ掛けている湿布をゆっくり剥がした。




「っ!!!???」

「……。」

「? 黒子っち如何したんスか?」

「これ……」

「なっ、何なんスか……此れ!?」




黒子と黄瀬が声が出なく成る程見て驚いてしまったのは、空の右腕の湿布が貼られていた場所だった。色白で綺麗な肌に浮かび上がっている普通ならあり得ない程広い範囲が鬱血した痣だった。

信じられない位鬱血し、腫れも酷い状態だった。黒子も黄瀬もあまりの衝撃に開いた口も塞がらない状態……放心状態だ。




「こんなになるまで、何をされたんでしょう……」

「酷過ぎるッスよ……こんなの……」

「この人、沢田 空さんって名前みたいですよ」

「えっ? 黒子っち、なんで名前知ってるんッスか?」

「失礼ながら生徒手帳を拝見させて頂きました」




黄瀬は空のスクールバックを見ると中を見た形跡とバックの傍に生徒手帳が置かれていて、黒子はある意味凄いかも……と思った黄瀬だった。そんな黄瀬もまた、申し訳ない、ダメだと分かっていても生徒手帳に手を伸ばした。

純粋にその子の名前が知りたかったから。




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