キセキの秋桜
18
「何処に行こう……行く宛て何てない」
雨に打たれたまま何処に行くわけでもなく、ただフラフラと歩く。すれ違う人達も特に気にする訳でもなくただ通り過ぎて行く。
「……。」
「こんな時間に一人で居たら、危ないッスよ?」
「それに風邪を引きますよ?」
「誰」
「俺達のこと覚えてないッスか?」
「この前……」
「あっ、」
自分に傘を差す黄瀬と傍で傘を差す黒子が来ている制服を見て思い出したのか、黄瀬と黒子を見る。黒子と黄瀬は少し嬉しいと思う反面、切ないとも思っていた。
あの時の少女は、冷たい瞳と無表情に加えて心を閉ざしていたから……。
「傘、いらない」
「そういうわけにはいかないんスよ」
「家まで送りますよ」
「……。」
空は名前も知らない人達のする行為が酷く滑稽に見えた。自分に優しくした所で何も見返りなど無いのにと。
「あの……」
「何」
「名前聞いていいッスか?」
「嫌……だ……」
フラッ
「「!?」」
バシャッ
「っ、」
「大丈夫ッスか!?」
「黄瀬君」
「俺ん家に運ぶッスよ、黒子っち」
「はい!」
黄瀬は傘を慌てて閉じ黒子にお礼を言い、返すとスクールバックを持ち直してびしょ濡れの空をおぶり、空のスクールバックを黒子に渡すと黄瀬は走り出した。
黄瀬に続く様に黒子も走り出した。
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