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キセキの秋桜
17


ザァァァァ




「ははっ、結局ママもビアンキさんも信じてなかった」




沢田家を飛び出して直ぐ、タイミングよく雨が降って来た。空は傘も差さず、傷にも響くにも関わらず、目的も無く歩いていた。




「信じない。誰も信じない」




周りに人が誰一人居なくなり、空一人だけとなった。半分自暴自棄な少女を誰一人として気にも止めない。

ただ二人を除いては。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「傘持っててよかったッスね」

「そうですね」

「てか、黒子っち用意周到過ぎでしょ」

「黄瀬君、傘返してください」

「悪かったって。お願いだからそんな真顔で言わないで! 謝るッスから」




─会話から遡る事数時間前─




部活も終わり、帰ろうとしていた時、雨が降っていて他のメンバー達はブチブチ文句を言う者も居た。そんな中、傘(折り畳み式)を差し帰ろうしている者が一人。




「おい、テツ」

「はい、何でしょう?」

「何颯爽と帰ろうとしてるのだよ」

「用意していたので」

「狡いッスよ、黒子っち〜」




サラッといいのける黒子にメンバー達は黒子らしいと思った者は少なくない。ただ、狡いとも思った者も少なくないだろう。




「では、ボクはこれで」

「黒子っち〜」

「……何ですか」

「傘に入れてもらおうと思って」




図々しくも傘に入って来た黄瀬に黒子は嫌そうにするも渋々入れる事にした。……が、やはり嫌だったのか傘の中が狭かったのか、もう一本折り畳み傘を出し、黄瀬に渡した。




「黄瀬君、これ使ってください」

「いいんスか?」

「狭いので」

「そっち!? まぁ、有り難く使わせてもらうッス」




こうして、最初の会話に戻る。




───────────────




「あれ? あの子、この前の……」

「こんな雨の中何してんスかね?」




黒子と黄瀬は遠目だが、傷が酷くなっている事に気付いた。服装も並中の制服だったので間違いない。




「一人で危ないですね」

「そうッスね」

「如何します?」

「取り敢えず、放っておく訳にはいかないッスよ」

「決まりですね」




黒子と黄瀬はフラフラと目的も無く歩いている空の歩いていく方向へ歩いて行く。尚も雨は降り続ける。




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あきゅろす。
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