[携帯モード] [URL送信]
恋愛幸福論



十五回、まぁこれといって特別な意味など持たなかった誕生日。
美味しいものが食べられて、欲しかったものが貰えて、いつもよりみんなが少し優しいだけのこと。

だけどそれが、嬉しくて、幸せで、意味を為すものだと知った。
十六回目。





「あ、阿部」
「ん?」
「ふは、ついてんぞ」
「…うぇ」
「どんだけがっついて食ってんだよお前は」
「うるせ、食えるときに食っておくんだよっ」
「あのな、これお前のためのなんだから、お前優先だぞ?そんな慌てんな」
「慌ててねぇ」
「はいはい、おら、どんどん食べろって」
「…だから食べてるっつの」


そうだな、なんてこの男はへらっと笑って俺の髪をぐしゃぐしゃと撫でる。
それを振り払う、…なんて面倒なことはせずそのままにしておいた。

野球部主催で開かれた俺の誕生日パーティ(とは名ばかりの飯会だったりする)は、いい具合に進んでいる。
それぞれ、飯をガツガツ食いつつケーキやら何やらに手を出して。
そう、どんちゃん騒ぎ。
人の誕生日にかこつけて何を…とも思うが、嫌いではないので何も言わない。

そして、今ちゃっかり隣に居座って髪を撫でている俺の恋人は、たぶん俺より浮き足だっていた。
いい加減撫でるのヤメろ、と形のイイ頭を叩いても、はいはいと笑顔だし。


なんつーか、その、


「(くすぐってぇ…)」


今までだって、シニアのヤツとかに祝ってもらったことはあって。
もちろん家族だって。

でも、恋人、に。
恋人に祝ってもらうっていうのは初めてで。
俺以上に嬉しそうなハゲを見るのは不思議で。
よくわからない感情がぐるぐるしていて。

ふ、と視線を隣の花井に巡らせれば、にこりと笑われて、身体が熱くなる、


「……っ」
「ん?どした?」
「…何も」


嬉しい、と。
嬉しくて、幸せなのだ、と、そう自覚してしまった。

今までこんなふうに思ったことなんてないのに。
たかが誕生日なのに、それだけだったのに。
この先どうしろってんだ。
お前といなくなったりしたらその先、どうしろって。

誕生日に、意味なんか、持たせやがって。


「なぁ、阿部」
「…!」


ぐるぐるしていると、急に花井が俺の手を握って。
瞬間、じわじわと俺の右手は熱を帯びていく。

周りが騒がしいハズなのに、自分の心臓の音と、花井の声しか耳に入らない。
あぁ、もう!


「な、に」
「うん」
「なんだ、ってば」
「…俺、お前に会えてよかったと思うよ」
「…」
「こうやって一緒に野球できて、バカ騒ぎして、好きになって」
「っ、」
「すげぇ、幸せ」
「…はな、い」


へらっと本当に嬉しいのだと、そんなふうに笑うから。
なんで、こんな、俺が。
俺が、泣きそうに、なんだよ…バカハゲ。


「阿部」
「…っ、」
「生まれてきてくれて、ありがとうな」
「う…」
「これからも、お前の誕生日祝わせろよな?」
「ば、か…っ」
「うん」


ぐっと手を引かれ、そのまま花井の胸にダイブ。
見られたくなかったから、うりうりと顔を押しつけた。
そしたらまた、コイツは優しく頭を撫でて。

あぁ、もう!
幸せだよ、ばか!





恋愛福論

(お前とだから特別)
(お前とじゃなきゃ、そんなの、意味ない)





―――――
というわけで同率だった花阿でした!

なんかもうこの二人はイチャイチャがわたしのサイトでは普通な気がして怖いです(笑
萌え禿げそうです←




第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!