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ワンダフルデイズ



「よし、準備オッケー?」
「あ、はい」
「じゃあ行こうか」
「…はい」


にこりと笑った慎吾さんは、そのまま自然に俺の手を取って歩きだした。
吐いた息は真白に染まる。
共有した体温は混じりあってじわじわと浸透する。

あぁ、なんだか、とても。


「夜ご飯は何がいい?」
「え?あ、な、何でも…」
「何でもとか、隆也のために作るんだから、好きなもの言ってよ」
「…普通、何作るかって先に考えてません?」
「あ、バレた?」
「当然です」
「今日はグラタンとかどうかなって思ってるんだけど、隆也好き?」
「好きですよ」
「よかった、…じゃあ買い物して帰ろ」
「え、今からですか?」
「そう、隆也と一緒に買い物もしたくてさ」
「…」
「嫌?」
「ヤ、だったら、手だって…つなが、ない…で、すよ」
「そっか」


それは嬉しいなー、と慎吾さんはつないだままの俺の手を軽く振り回した。
普段から大人っぽい彼のそんな子供のような振る舞いは珍しくて。
だけどなんだかそれすらも愛しくて。

気が付いたら、ふ、と笑みが零れていた。


「なーにを笑ってるの」
「別に」
「こら、言いなさい」
「はは…だって慎吾さん、なんだか嬉しそうだから」
「えー?」
「なんていうか、浮かれてる?の、珍しくって」
「…そりゃ嬉しいでしょー、大事な大好きな恋人の誕生日なんだから」


そう言うと、ちょっと拗ねたように口を尖らせて、でもすぐに優しく笑って。
それがくすぐったくて。

きゅ、と握った手に少しだけ力を込めた。


「あらやだ珍しい」
「…なんですかそのしゃべり方、気持ち悪い」
「ひど、だって隆也が甘えてくれるなんて珍しいでしょ」
「…甘えて、ません」
「ふーん…」


にやにやといやらしく顔面を崩壊させた顔をずいっと近付けて、それならいいけどぉ、とこれまた腹の立つ口調で慎吾さんは俺に言った。


「なんですか、近いです」
「いやいや、かわいい顔してるなぁって」
「かわっ…、戯れ言はどうでもいいですから」
「戯れ言とかひどい、隆也ってば照れちゃうんだから」
「…」
「あれ、また珍しい…黙るなんてどうしたの」


少しだけ、少し、だけ。
今日は、特別だから。
なんだかいつもより、…幸せを感じてしまうから。

だから少しだけ、自分に素直になろうかなって。


「…隆、也?」
「ちょっと、だけ」
「うん?」
「寒いから、」
「寒いから?」
「…ぎゅって、して、くだ…さい」
「…!」
「や、ですか」
「…嫌なわけないでしょ、うりゃうりゃ」
「わ」
「ついでにちゅーもしちゃいましょうか」
「っ、」


さらりと額の髪をかきあげられ、そのままリップ音が額から聞こえる。
それにかあっと身体中が熱くなったけれど、すぐぎゅうっと抱き締められて。


「あーもうかわいい、何、誕生日だから素直なの」
「…違います」
「ふーん、そう」
「はやく、かいもの、いかなきゃ、ですね」
「そうだねぇ」


そんなことを言いつつ、離れる気なんかまったくなくて。
外で何してんだとか。
お腹がすいたとか。
いろんなことが頭を駆け巡ったけれど。

まぁいいかと幸せに浸った。

そんな十六歳初日。





ワンダフルイズ

(ありふれた日も)
(あなたがいるだけで素敵な日になるの)





―――――
というわけで島阿です!

いつもわたしは島阿でなぜか阿部が泣いたりちょっと切なかったり。
なのでおもいっきり甘い島阿にしました、吐きそう←




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