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ナツさん宅5万打リクエスト



※色々捏造。捏造埼玉。










日曜の午後、グラウンドに着いたところでそのメールは届いた。


『君の大事な投手は預かった。返して欲しければ今すぐ××公園へ行け』


「……はァ?」

「ちーす、あれ、阿部どしたの?」

「栄口、いや……三橋、途中で見かけなかった?」

「?んーん。あ、いーずみー!」

「おー!」

「今日三橋はー?」

「まだ来てねー!」

「…だって」

「…………」


まだ練習が始まるまでには時間があったが、激しく嫌な予感がした。
こんな悪ふざけをする人じゃないけど、すぐバレるような嘘をつく人でもない。

結局、練習を始めて20分経っても三橋が現れなかったあたりで、オレは監督の居るベンチへ向かった。


「すみません。三橋を迎えに行ってきます」





××公園についてすぐ、メールで現場に着いた事を相手に知らせた。


『南側の入り口から公園に向かって右手の木の、3本目に次の指示が書いてあるから従って』


……そんな事じゃないかと思った。

最初のメールは『公園へ行け』そこに犯人(拉致は立派に犯罪だ)がいるなら『公園へ来い』になるだろ。

言われた通り3本目の木を見回すと、手が届く高さの小枝に紙切れがお御籤みたいに結わえてある。


『次は××町にある花屋、フローリスト××   (へ)』


「へ……?」

何のつもりかは知らないが、会えないと三橋は取り返せないだろうし、思いッきり文句も言えない。
オレは××町へ向かった。





その花屋までは30分くらいで着いた。

歩道まで花が溢れている、滅多に行くことがない花屋の店頭でメールを打とうとすると、店内から出てきたエプロン姿の女の人が、


「タカヤくん?」

「あ……はい」


ニコニコと一枚の紙切れを差し出す。


「これ、渡すように頼まれたの。特徴聞いてた通りね」


どんな特徴を伝えていたのかは気になったが、オレは黙って紙切れを受け取った。


『次は××駅の掲示板   (ん)』


……言いたい事は、ここで解った。

なんだソレ、そんな事の為に三橋拉致ったのかよ。…そんな事ってのは言いすぎかも知んないけど、冗談じゃねーよ。こっちは限られた練習時間大事に使ってんだ。第一三橋はかんけーねーだろ。ふざけんな!

相当険しい顔になっていたのか、競歩で駅へ向かう途中、人混みは自然にオレの前で割れた。







着いた駅の掲示板には、見知った文字で


『お疲れ様。西口のMで待ってる   』


最後の文字は見なかった。
とにかく、そのままの勢いで西口のMへ向かった。





「あ、べ くんっ!」

「おー、久しぶり!」

「よー、タカヤ」


西口のMには、ありえない顔ぶれが集まっていた。

三橋と、派手な投手二人と、犯人。

普段なら頭を抱えたくなる組み合わせだが、今現在オレが用があるのは犯人だ。

黙ったまま薄笑いで見上げてくる犯人の横まで直行すると、そのまま襟首を掴んで引張り上げた。


「……ッ!!」

「ちょ、まて、こら!」

「んな目立つとこで何すんだ、バカ!」

「あ……べくん、怒って…!(ガクブル)」


バカにバカと言われたところで力を緩める。
派手な投手共をギッと一回睨んでから、目の前の犯人に向き直った。
そう、締め上げられても怯んだ様子すら見せないセカンドのいやらしいヤツに。


「思ったより早かったね」

「…何のつもりですか」

「解んない隆也じゃないだろ?」

「っわかんねーよ!練習時間返しやがれ!!」

「え?今日午後練だったんだ?」


襟首を掴んだままなのに、島崎は首を傾げる仕草で三橋を見た。
三橋はビクッと更に身を竦め、青い顔できょどっている。

想像していたのと少し違う展開に、とりあえず両手を離して洗いざらい話させる事にした。


「偶然だったんだよ」


そう首謀者は前置きをした。
オレは半信半疑で話しの続きを聞いた。

まず、日曜なのに早く起きてしまった島崎は、家に居ても何もすることがないからと外に出た。
習慣になっているコースでスポーツ店を巡っていると、そこで偶然後輩である高瀬に会った。
そこまではありそうな話だ。

最近どう、なんて他愛ない話をしながら更にだらだらと歩いていると、今度は意外な組み合わせの二人に出くわした。榛名と三橋に。

榛名もまあ高瀬と同じようなコースを巡っていて、親に用事を頼まれて遠回りをして練習に行こうとしていた三橋を捕まえたそうだ。

三橋は中学時代がアレで、何かと普通じゃなかったから、ごく普通に年下扱いをしてくれる榛名を自分の先輩みたいに思っている節がある。
まだ時間あるなら皆でMにでも入んね?と榛名に言われて断る筈はなかった。

そして奇跡の4人が一同に会して、島崎はこの計画を思いついた。






「ヒィッ!」


ガッと音が聞こえる勢いで三橋の頭を両の拳で挟み込む。


「…なんっでそこで、これから練習だからって断らねーんだオマエはーッ!!」


ギリギリ捻ると、三橋の悲鳴は長く細く掠れていった。


「ああ、そこは責めないでやってくれ。悪いのは三橋じゃねーから」

「そーそー。そそのかしたのはソイツだから」


三橋のコメカミから手を離して、榛名の指先を辿る。


「……やっぱりアンタですか」

「…練習前なんて知らなかったからさー」


オドオドしながらも断ろうとした三橋は、


「じゃあ三橋くんじゃなくて『大事な投手』って打っちゃおう。これだけ投手いんだから、まるっきり嘘でもねーし」

「まあ、オレも元バッテリーだしな」


なんて二人の会話にのせられて、


「あべ、くんの投手は オレ、だっ」


と宣言し、残ってしまった。

結果、午後練に現れなかった三橋を心配して、あちこち引張りまわされたわけだ。

ぐったりと項垂れるオレの前で、赤いフニャフニャした変な顔で笑っている三橋は「あ べくんの、大事な投手 オ、オレっ」なんてひとり言みたいに呟いて、ふひっと笑った。殴りたい。


「……で、何で高瀬さんまでこの阿呆共に付きあってんですか」

「オレ? いや、だって何か面白そうだったから」


そう悪びれずにニカッと爽やかに笑った顔を見て、投手なんてどいつもこいつも同じだと改めて打ちのめされる。

投手なんて……!

そこで、はたと思い出した。時計を見る。監督に連れ帰ってくると言ったからには、練習時間内に連れ帰らないとまずい。


「三橋、帰るぞ」

「う、うん!」


慌てて席を立つ三橋を待つオレに、全ての元凶である犯人は馴れ馴れしくも声をかけてきた。


「隆也―」

「何ですか」

「『返事は?』」

「…………死ね」


そんなやり取りをしている間に三橋が通路まで出てきたから、左腕を掴んで出口へと向かう。

引き摺られながらも三橋は投手二人に挨拶らしきことをしていた。



あんな人にくれてやる返事なんて無い。

練習で疲れた身体を更に疲れさせて、眠りに落ちる直前に告げられた言葉の返事なんか、

全国制覇までは絶対にやらない。





(高瀬、オマエどっちだと思う?)

(ああ? 大丈夫なんじゃねーの。オレ、慎吾さんが振られるの見たことねーし)

(じゃーオレ、振られる方にMシェイクね)

(のった)

(お前らさ……本人の目の前で賭けるのヤメてくんね?)





―――――
ナツさんに「阿部を引っ張り回す島崎で島阿」と、書きにくいリクをしてしまったら、こんな素敵文が…!
慎吾さんってば、策士^^!
振られないですよね慎吾さんだもの!←
きっと返事をしたいだろう阿部が好きです'ω`←
ナツさん、素敵なお話をありがとうございました!




あきゅろす。
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