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オアツイことで!



※花阿ですがほんのり田泉表現もありますので苦手な方はご注意ください!
※だが田島は出ない
※そして何故か水谷視点←



「そういや…なぁ泉、“ケンタイキ”ってなんだ?」
「ぶっ!」
「…はぁ?」


聞こえてきた言葉に、思わず飲んでいたスポーツドリンクを吹き出した。
でも俺悪くない、悪くないよ俺は!
隣にいた巣山だって俺を見て「汚い」とは言ったけどその後「しょうがない」って言ったし!
文貴は悪くない!
悪いのは、ぶっ飛んだ発言を部室で始めた阿部!(とその質問相手の泉!)

はぁとため息を吐いてからじとーっとその二人を見る。
もちろんその視線に二人が気付くわけもなく…。
虚しくも会話はどんどん進められていった。


「“ケンタイキ”って、“倦怠期”のことか?」
「たぶんそうなんじゃね?」
「急になんなんだよ」
「いや、ただなんか昨日シュンにさ…」
「弟に?」
「ん、昨日家で『花井さんと兄ちゃんって倦怠期とか来ないの?』って聞かれて」
「で、お前は意味がわからなかった、と」
「…うるせ」


あああああもう二人ともこんなとこでなんつー会話してんのさ!
っていうか弟くんもなんつー質問してんの!
ダメ!そういうこと阿部に聞いちゃダメ!!
この子そういうことにホント無関心なんだから、知らないんだから…。

ほら、泉ったら楽しそうににーって笑ってる。
アレ絶対悪いこと考えてる顔だよ。
どうやって阿部からかってやろうかな、って顔だよ。

まったく…こういうときに限って花井は委員会で田島は居残りで、どっちもいないんだから!役立たず!


「倦怠期ねェ…」
「さっさと教えろよ」


眉間にシワが寄ってどんどん不機嫌になっていく阿部の横で、泉は口笛でも吹きそうな勢いだ。

…知ーらない。
関わったら俺が飛び火くらってぎゃーな感じになっちゃうもんね。
だから俺は知りません。
他人のフリ他人のフリ…。
他のみんなも俺と同じ考えみたいだ、なんて優秀。


「おい、泉」
「…あー、アレな、倦怠期って恋人同士における、ラブラブ期間のことだぞ」
「ラブラ、ブ?」
「そ、つまりは恋人なんだけどまるで夫婦みたいに通じ合っちゃっててもうオーラにまで滲み出ちゃうわけだな」
「「…」」
「そう、なのか…(全然知らなかった)」


泉の言葉に、俺たちはみんな呆れたため息しか出ない。
何ソレ、何その倦怠期。
阿部も簡単に信じるんじゃないよバカあああ!

…これ、絶対面倒なことになるパターンだよね。


「なんで花井と俺には倦怠期が来ないんだ…?」
「愛が足りないんじゃね?」
「っ、泉は!泉は田島との間に倦怠期来たのかよっ」
「さぁ?」
「〜〜〜っ!」


いよいよ本格的に阿部の機嫌は急降下。
キレるんじゃないかと俺たちはハラハラ。
だけどどうすることも出来ないので見てるだけ。
俺たちは花井が少しでも早く来ることを祈るだけ。

―――そして数分後。


「アレ、なんだ…まだ部室にいたのか」


漸く登場した花井に、動けなかった俺たちはホッと肩を撫で下ろす。
と同時に阿部がダダダッと花井に詰め寄って、また別の緊張感が走ったのだけども。


「おいクソハゲ!」
「は?え?」
「ハゲ!アホ、お前…っ」
「ちょ、あ、阿部?」
「死ねマジ死ね!」
「はあぁ!?」


物凄い剣幕で花井に掴み掛かった阿部は本気だった。
なに、阿部そんなにラブラブ来ないのヤだったの?
花井とラブラブじゃなきゃヤなの!?

ワケのわからない花井は、あたふたしてるだけだし。
泉は爆笑をなんとか堪えてるって感じだし。


「お、落ち着けよ阿部!」
「うるせぇ!」
「何をンな怒ってんだ」
「…お、まえが!」
「俺?…何かしたのか?」
「………お前、本気で俺のこと好きじゃないんだろ!」
「…は?」


あーぁ…。
阿部ってばもう極論まで達しちゃったよ。
倦怠期が来ない=ラブラブじゃない=花井は俺に本気じゃないの方程式だよ。
ドンマイ、花井。


「…なんでその結論に達してんだお前は」
「…」
「あのな、俺がお前に本気じゃねーとか、いくらなんでも怒るぞ」
「っ、うるせぇ!」
「本気じゃねーわけがないだろーが」
「…じゃあ、なんで」
「?」
「なんで、花井と俺には倦怠期が来ねーんだよ!」
「倦怠期ィ?」


あ、泉吹き出した。
我慢出来ずに腹抱えて笑ってるよ。
必死に声出すのは耐えてるけど。
花井も泉には気付いて訝しげな顔してる。(阿部はいっぱいいっぱいで気付けてない)

さてさて、この先どうなっちゃうんだろ…。
たぶん、栄口あたりが助け船でも出すのかなぁ。


「倦怠期ってお前…」
「…っ」
「…んなもん、こなくたっていいだろ」
「な…!」
「別に倦怠期が恋人同士に絶対来るってわけでもねーし、来なけりゃそれで」
「…っ」
「え、ちょ、なんで泣きそうになってんだお前は!」
「う、うるせぇ…っ」


来なけりゃいい、ね。
そりゃね、倦怠期がラブラブ期間だと思ってる阿部はそんなこと言われたら泣きそうになるよ、うん。
あ、もう泉普通に爆笑してるんだけど。


「死ね!ハゲ死ね!」
「ま、待てって!阿部?」
「っ…」
「ストップ、ストップ二人ともストーップ」
「…栄口」
「阿部、落ち着いて、それから泉も落ち着け」
「えー」
「えーじゃない、お前な」
「ちょ…俺状況がまったく見えないんだけど」


あぁやっぱり。
やっぱり、栄口登場か。
さすがです、後はお任せいたしますよ…。

本当のこと知ったら、阿部どうなるんだろ。


「えーっと、まず泉、お前悪ノリしすぎ」
「えー」
「それから阿部、なんで泉に聞くの、俺とか水谷に聞きなよ」
「へ…?」
「で、花井」
「おう」
「阿部なんだけど、阿部ね、倦怠期って別のモンだと思ってるから」
「は?」
「泉が倦怠期はラブラブ期間のことだって教えたの」
「ラ、ラブラブ…?」
「そ、だから阿部が泣きそうになってたのもその理由」
「〜〜〜っ、い、泉!お前、まさか!!」
「騙されるお前が悪い」
「ざっけんな!おま、俺が、つーかっ!」
「阿部は花井とラブラブじゃなきゃイヤなんだなぁ?」
「黙れ!!」


ぎゃーぎゃーと騒ぎだして泉を追い掛け回す阿部と、それを爆笑しながらかわす泉。
苦笑する栄口と、それから呆然としている花井。
そりゃそうだね、いきなり何言ってんだって話だ。

あ、でも花井の顔、真っ赤になった。
どうやら…漸く状況を理解したみたい。


「おっ、まえな!」
「ぎゃ!?」
「ふざけんなよ…んなかわいい理由で泣きそうとか、お前はホントに…!」
「ちょ、なっ、は…離せハゲ何してんだよ!」
「絶対離さねー」
「…っ、ざけんな!」
「安心しろ、倦怠期っつーのは別れるか別れないかの瀬戸際みてーのだから」
「…」
「俺が言った意味わかんだろ?そんなもん俺たちに一生来ねーよ」
「………ばぁ、か…ふざけんなよはげ」
「うん」
「…べつにおれは、らぶらぶじゃなくたって、いいんだからな」
「うん」


ふー…一件落着ってね?
あーもうハイハイそんなラブラブっぷりを部室で見せ付けなくていいから。
相思相愛ね、うんうん。
倦怠期?
来ない来ない。
ゴチソウサマゴチソウサマ!

だからお願い。
この部室の空気どうにかしてよキャプテン。





ツイことで!

(見せ付けなくたって知ってるから)
(だからお願い俺たちもいるの忘れないで)





泉まだ爆笑してるし…。



―――――
田泉要素がほぼ皆無な件。
そして阿部がバカっぽい件。
まぁ、気にしたら負けだと思ってます←

結生さんのお誕生日のお祝いとして捧げさせていただきました^^!
おめでとうございます、遅くなってごめんなさい;




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