[携帯モード] [URL送信]
17



恋心が、わからなかった。
誰が好きだの誰が告っただのに興味なんかなくて。
青春、俺にとっては野球。
頭の大半を占めるのが野球。

そうだった。
だけど野球以外で俺の頭を占めたものがあった。

それが、元希さんだった。

急に目の前に現れて、俺を全部かっさらっていった。
俺の心を魅了して、奪っていった。
元希さんにそんな自覚はなかっただろうけど。
俺にはいつも、元希さんがキラキラして見えた。


それが俺の恋だった。
好きって気持ちだった。

暴力を奮われるようになってから、それは薄れていってしまったけど。


高校に入ってから、恋心、なんてものをもう抱くことはないと思っていた。
俺は、もう誰かを好きになんてなれないと思っていた。
だって、誰かを好きになっても結局こうなるんじゃないかって。

ずっと元希さんから、離れられない気がして。

だけど、


『阿部』


俺を呼ぶ声が優しくて。
全部、包み込んでくれた。

もちろん最初は、クラスメイト、キャプテンとして信頼していたし、友達の一人で。
こんな気持ち、抱くわけないと思ってたのに。


『しょうがないな』


そう言っていつも、結局仕事を手伝ってくれて。


『お前…少し寝ろって』


身体の心配をしてくれて。


『…ごめんな』


俺のために、傷付いて、心を痛めてくれて。


『阿部が……好きだ』


俺なんかを、好きだって言ってくれて。

全部が嬉しいと思った。
他でもない花井にだから、なんだと思った。
俺は、花井の隣に居たいと思うようになって。
気付いたんだ。

都合がいいと思われたって仕方ない。
軽いヤツかもしれない。
それでも俺は、花井が、





この想いに名前をつけるなら、それはやっぱり恋心でした。





俺は、花井が好きだ。
大切で、これからもずっと一緒にいたいと思うんだ。

俺は、新しい恋心を見つけたんだよ、元希さん。
だから、ごめんなさい。
もう俺は、あなたの元には戻れない、戻らない。

元希さんには、幸せになってほしい。
暴力なんか奮わないでいられる、心を預けられる、いつも笑っていられる、そんな人が現れてほしい。

俺は、その役目、一度だって元希さんに果たしてあげられなかったから。




第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!