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堕ちて溺れゆく



「なんだコレ…」
「あ…、お帰りなさい…呂佳さん」


家に帰ってきた俺の目に飛び込んできたもの。
それは、ぐちゃぐちゃに汚れたキッチン。
と、そこにたたずむ一人の少年、阿部隆也。
申し訳なさそうな後悔したような、そんな顔で俺を見ている。


「なんでいる?」
「え、っと…」
「どういう状況だコレは」
「…その」
「どうしたらここまで汚れんだよ!」
「っ…!」


ガッと大きな声を出せば、それだけでびくっと大きく肩を揺らして泣きそうな顔になっていた。

…違うだろ、いきなり泣かせてどうするんだ。
…まず事情。
なんでいるか、どうしてこうなったか、聞け、俺。


「隆也」
「…は、い」
「なんで、いる?」
「利央、が…、今日は呂佳さんいるって、言ってて」
「だから来た」


俺がそう尋ねると、こくこくと必死に首を振る。
いや、そんなに激しく振ったら首取れんぞ。


「…で?」
「?」
「どうしてこうなった?」
「…ん、と」
「…」
「…」
「隆也」
「…り、料理を」
「…」
「しようと、して」
「料理?」


隆也の言葉を聞き、改めてキッチンを見渡す。

…そこには、確かに料理をしようとした痕跡があった。
ただ、それはしようとしただけであり料理ではない。
皿、は割っていないようだがフライパンが焦げている。
調味料はいろいろあって、床にはこぼしたあと。
隆也が付けるエプロンからその酷さが伺える。

何がしたかったんだ。


「…隆也」
「う…、はい」
「お前は人の家まで来て何をしてんだよ」
「すみませ…」
「俺が料理得意なことくらい知ってんだろ?わざわざやる必要ねーだろ?」
「…」
「料理して、またケガでもしたらどーすんだよ!」
「〜〜、っ」


もう一度大きな声を出すと、今度は完全に隆也を泣かせてしまった。
俺は悪くない。
心配させる隆也が悪い。

…別に、汚したことに怒ったわけじゃなかった。
ただ、また隆也にケガとかさせたくなかっただけだ。


「…っう、え」
「…もう、料理とかすんな」
「…」
「なんか食いたいもんでもあったのか?言えば作ってやるから、な?」
「…ちが、…です」
「あ?」
「ちがうん、です!」


珍しく張り上げられた隆也の声に、俺が驚いた。


「おれ、いつも…っ、ろかさんにしてもらって、ばっかり…だから」
「…」
「たまには、おれが、ろかさんになにかして…あげたいんです」


そう言うと、キュッと唇を噛んで俯いた。
俺はといえば、嬉しいやら呆れたやら。
隆也は、ホント飽きねーヤツだと思う。


「隆也」
「…なん、です、かっ」
「こっち来い」
「へ…?」
「いいから、おらっ」
「わっ…!」


無理矢理隆也を引き寄せて髪をわしゃわしゃと撫でる。
そうすると驚き戸惑った目で俺を見ていた。


「ろか、さん…?」
「…お前は、いてくれればいいんだよ」
「え…?」
「別になにもしなくても、お前はいてくれるだけで、十分だってこと」
「ろかさん…」


…まさか、年下相手にこんなセリフを吐くとは、自分でも思ってはいなかった。
なんでも許せるくらい、好きになるなんて、な。





堕ちてれゆく

(そばにいるだけで)
(かけがえのない君に)





「でも、やっぱりいっかいくらい…」
「…じゃあ今度、俺がいるときに一緒に、な」
「ホント、ですか…?」
「おー」
「…へへ」
「(かわいいヤツ…)」



―――――
マイナーすぎますよね…?
でも地味に好きなんです、呂阿(S呂佳さん←)




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