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嘘だと言ってくれ



俺は、一目惚れなんてものは断じて信じねェ。

だって会ったばかりのヤツを好きになるなんて絶対におかしい。
フツーなら、会話していくうちに好きになったり、とかだろ?
なんで話したこともないヤツを好きになるんだ。
そりゃ少し、いいなー、とか思うことはあるけど。

好きになる、なんて!





「えっと」
「…」
「あの…?」


目の前の人物は、どういう状況だろうかと俺を見ている。
だが残念ながら俺もどうしてこうなったかなんてよくわかってない。

俺はなんで、コイツを抱き締めてるんだっけ?


「…とりあえず、離してもらえませんか?」
「あ、わり」


我に返り慌てて身体を離す、と同時に周りを見る。
床に散らばった本。
倒れた脚立。
それで状況を思い出した。

今日、俺は本屋に行って、今日発売の野球雑誌を買おうとしてた。
で、その雑誌コーナーにいたのがコイツで。
脚立を使って上にある本を取ろうとしてたんだ。
グラグラしてて危なっかしーな、と思っていたら、見事にバランスを崩して。
咄嗟に手を出して抱き留めたんだ、うん、そうだ。


「(細かったなー…)」
「あの!」
「ん?」
「ケガとかしてませんか?大丈夫ですか!?」
「平気」
「よかった…」


俺がそう言うと、ものすごいホッとした笑顔で俺を見た。
その瞬間、ドキッと心臓が鳴った気がした。

…いやいや、ドキッ、ってなんだよ。


「球児にケガさせたのかと思った…」
「え、なんで知って」
「だってココ、野球雑誌専門コーナーですよ」
「あ」
「俺も野球やってんですよ、もしかしたら試合で当たるかもしれませんね」


なんて、散らばった本を片付けながら笑うし、また心臓がドキドキして。

だから、ドキドキってなんだよ俺!!


「…ポジションどこ?」
「あ、キャッチャーです」
「キャッチャー!?」
「え、なんですか」


彼の言葉に驚いた。
この細さと小ささでキャッチャーなんて!(岳史と比べるととんでもない)
もしかして、


「…一年生?」
「はい」
「そっか、それでか」
「?」
「いやこっちの話、俺はピッチャー」
「球、受けてみたいですね」


今度は安心とかじゃなくフツーの笑顔。
え、なんだコレ。
なんでこんなに心臓が速いんだ俺。


「…じゃあ俺行きます、助けてくれてありがとうございました」
「あ、おう」
「試合、当たるの楽しみにしてますね、竹之内さん」
「え!?」


立ち去る間際、彼は俺の名前をつぶやいた。
なんで、俺の名前知ってんだよ…!?

俺が混乱して立ち尽くしていると、ちょっと離れた場所で彼は振り向いた。


「俺、詳しいんですよね」
「…」
「だから知ってました、美丞大狭山のピッチャー、竹之内善斗さん」
「…!」
「また会えるといいですね」


そうしてニッと笑った顔は、楽しそうだった。
…ああ、この笑顔はキャッチャー向きだ、うん。

走り去っていった後ろ姿を目に焼き付けて、俺はただ呆然としていた。

嘘だろ、俺…。





だと言ってくれ

(この俺が一目惚れ)
(そんなの嘘だ!)





あんな細くて小さくてキャッチャーなんて反則だ!
かわいすぎる!ずるい!

…彼の名前、聞いとけばよかったな。
なんて抱き締めた感覚を思い出しながら考えていたら、見事に雑誌を買うのを忘れた。
何をしに来たんだ俺。

一目惚れ?ってなに言ってんだ俺は!!



―――――
なんだコレは(わなわな)
わたしが書いたらひどいことになった、うわーん!
竹阿、ああ竹阿…リベンジリストに追加だっ
つち子さんごめんなさい!
こっそりつち子さんに捧げてみるよ(黙りなさい)




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