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どうしよう嬉しい!



鳴り響いた携帯電話。
時刻、十二時過ぎたところ。

ディスプレイに映る名前。
本来なら寝てるだろ。


「…」
『もしもーし』
「…なんか用かよ」
『ひっどぉ!阿部ひどい!』
「…切『ちょっ、待って切らないでよ!』
「…うっぜー」
『もう、阿部ったらー』


携帯電話から響いた声に、本気で切ろうかと思った。

いつもはこのうざいヤツ(水谷)は、この時間には疲れて眠っている。
…と、聞いた。
俺はデータ整理とか授業の予習とかでまだ起きている。
そもそも予習もせずに寝るコイツってなんなんだ。


『ちょっと阿部ー?』
「…あ?」
『人の話、聞いてた?』
「…」
『うん、聞いてなかったんだね、文貴泣いちゃう!』
「…『切っちゃダメ!』
「…わかったよ、何」


はぁ、と嫌味にため息をついたが、おそらくコイツには効いてない。
いったいなんだってんだ。


「早く言え」
『阿部やっぱりまだ起きてたね、って』
「…だから?」
『俺が電話したのはね、今日くらいは俺と一緒に早く寝ようよってこと』
「…意味わかんね」
『だからぁ、どーせ今日も予習してからデータ整理とかするつもりでしょ』
「そうだけど」
『阿部ね、見るからに寝不足なの!わかる?』
「…っ」


ズバリ、と事実を言い当てられて言葉に詰まる。
クソ…、水谷に言われるとは俺も終わりだな。


『花井とか栄口も心配してんだからねー』
「あぁ、そう…」
『あぁそうってねー…阿部は自分の身体のこともっと大切にしてよね!三橋三橋もわかるけど!!』
「平気だ」
『平気じゃない!阿部に倒れられたら俺困るし!』
「…は?」
『阿部が倒れちゃったら、阿部に会えないでしょ!』
「なに、言って…」
『俺、阿部が元気ないのは嫌だし、会えなくなんのも嫌だもん』


正直、早いとこ切って、予習に取り掛かりたかった俺は、水谷の言葉に耳を疑った。
それからすぐ、自分の頬が熱くなるのを感じた。


「…ざっけんな」
『え?』
「恥ずかしいこと、言ってんじゃねーよ!」
『だって本心だよ!』
「うっせーな、黙れよ!」
『え、あれ?阿部ったら照れてる?わ、かわいー!』
「〜っ、死ね!クソレ!!おやすみ!!!」
『あ、阿部待っ』


深夜にも関わらず大声で叫んだ俺は、水谷の言葉を待たずして切った。

だって、あんなの、


「(恥ずかしすぎる…!)」


水谷は、アレだ。
俺を心配しての、電話だったわけで。
花井でも栄口でもなく、水谷が、電話してきて。

会えなくなんのは嫌で、倒れられんのも嫌。

それは俺がす―――


「〜〜〜っ!」


バフッと枕に顔を埋める。
ダメだ、この後、集中なんて絶対できない。
しょうがないから、今日はこのまま寝る!

覚えとけ、水谷…!





どうしようしい!

(何気なく気に掛けてくれるその存在)
(どうしようもなく)





次の日、めずらしく予習をしてきた水谷が、俺のためだと言いやがるから、何も出来なかった。



―――――
水谷はいい子!
阿部が大好きなんです。




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