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好きだよ。



あぁ、そうか。
ずっと好きだったんだ。

そう思った途端、ストンと何か零れ落ちた、そんな気がしてならなかった。
だって、なんて、滑稽な、


「情けな…」


誰に言うでもなく呟いた言葉は、俺自身を傷付ける。
言葉は刃となり、俺の心をズタズタに引き裂く。
やめろ、そんなの…わかってる、わかってるから。

きゅっと唇を噛み締めて、なんとか足を前に進める。
早く、早く、この場所から逃げ出したい。


「―――わたしね、花井くんのことが」


声が届かない場所へ、そう思い、聞こえてきた声は振り切った。





気付くのが、遅すぎた、とも思う。

これは報われない恋で。
どうして、なんで。
そんなことを考えるよりも先に、あぁ好きなんだ、と自覚してしまって。
こんなに、想いが身体を侵食したあとで。
しかも、たった今。


「っ、」


畜生、なんか、なんだコレ。
苦しい、苦しい苦しい。
胸が、胸の辺りがぎゅうっと締め付けられて。
気を抜いたら、きっと今にも涙が零れそうで。

自分はこんなにもアイツが―――花井が好きだったのか、と思い知らされる。


「く、…っ」


誰もいない教室に逃げ込むと同時に、膝から力が抜けた。
立っていられなかった。
よく、地面が崩れ落ちるとかいうけどそんな感じだ。

ぽたぽたと単調な音をたてて雫が床に落ちていく。
あぁ、俺泣いてる。
女々しい、なんて、なんて女々しい。
好きなヤツを想って泣くなんて、どこの乙女だ。


「あ、…う」


だけど止まらない。
違う、止められない。

なんでだろう、なんで花井なんだろう。
…そんなのわかってる。
アイツの、花井のあの優しさに甘えてるんだ。
あの、包み込むような優しさが、好きだ。
いや、きっと、花井だから。
花井だから好きなんだ。

花井だから、優しくされて嬉しかった。
花井だから、心配されて嬉しかった。
花井だから、隣にいれて嬉しかった。
花井だから、花井だから。


「…すき、だ」


きっとこの想いは誰にも知られることはない。
知られるつもりも毛頭ない。
ただ、俺の中に花井を好きだという事実だけあればいい。
それだけでいい。
それ以上は望まない、望んじゃいけない。

そうしたら俺は、また隣に並んで笑える。


「(……かわいかった、な…あの子)」


花井はあの子と付き合うんだろうか。
いやでも、アイツ巨乳好きっぽいし足りねーか。

なんてくだらないことを考えていると笑みが浮かんだ。

大丈夫、笑える、笑える。


とりあえず、涙が止まるまで部活には行けそうにない。
どうやって誤魔化そうか。





きだよ。

(お前が、誰よりも)
(きっと一生伝えることはないのです)





―――――
花→阿も好きだけど花←阿も好きです(花阿ならなんでもいいんだろうが)
阿部は想いの自覚がとても遅そうです←




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