■ 1 ぱちゃん。 耳のすぐ側で鳴った水音に、裕史は意識を取り戻した。 「………っ…?」 なんだか身体が安定しない。 全身を包み込む暖かさと浮遊感に、まだ自分が夢の中にいるのかと思う。 ちゃぷ、ちゃぷん。 また聞こえた水音は、顔に水滴まで跳ねさせた。 うっすらと開いた瞳にうつるのはゆらゆらと波打つ水面。 そしてそこから立ち上る薄い白い湯気。 あぁ、自分は温泉につかっているのだ……と、裕史が状況を半分ほど把握した瞬間、自分が背を預けていたモノが僅かに動いた。 同時に背後から囁かれる声。 「気付きました?」 「……ぁ、慎吾…?」 「はい、俺です。どこか苦しかったり痛かったりしませんか?」 「ん、…大丈夫だ……」 指の先までほわりと熱に包み込まれ、身体の芯まで暖まっていて、今はひたすら気持ちが良かった。 新たに沸き出た湯が竹筒を通って、とぽとぽと注がれ、水面がゆらり揺れる。 それにあわせて力の抜けた身体も揺らめくが、慎吾が背中から抱き締めるように身体を支えてくれていた。 浮かんでは引き戻される度に、波打つ湯が首筋で跳ねた。 心地よい水音を聞きながら僅かに上向けば、山に囲まれた昼間の青い空が視界に広がっていた。 やっぱり露天風呂は最高だと、眩しげに目を細める。 瞬間。 飛んでいた意識が、一気に戻った。 何故、自分がこうして風呂につかっているのか? 何故、今まで眠り込んでいたのか? けっして風呂につかりながら寝てしまった訳では無い。 意識を無くした原因を思い出し、咄嗟に凭れていた身体を起こそうとした。 しかし。 「じゃあ……続き、しても良いですよね?」 胸を抱き込む腕に力が込められると同時に、もう片方の手が油断していた裕史の下肢に背中側から潜り込む。 「ぇ…っあ!」 湯の中で裕史の身体は簡単に浮き上がり、慎吾の指を防ぎ用が無い。 抗議する間もなく、両足の狭間に辿り着いた指が一本、つぷりと根元まで体内に潜り込んできた。 「…し、んごっ……やめろっ!」 「あぁ、まだ充分に解れてますね、中……」 「くっ……、抜けっ、って……んぅ………」 裕史は自由な身体で必死に抵抗するのだが、水中で後ろから抱え込まれている状況では、あまり効果がなかった。 ばしゃばしゃと浮いた両足が水を蹴る飛沫だけが派手にあがる。 その足首を、不意に横から伸びてきた手が掴まえる。 「おい、目ぇ覚ましたと思えば、もう暴れてんのか?本当に元気だな、お前」 「武光っ!おまえ……、ぅあっ……やめっ……」 先程まで視界にいなかったので失念していたが、この場にいないはずが無かった。 武光は足首を掴み湯の上に引き上げたまま、不安定に上向く腰の中心に手を伸ばし、慎吾が弄る後孔の中へと自らも指を付き入れた。 「慎吾の言う通りだ。余裕で入ったぜ」 「早くもっと太いのを入れて欲しいって感じですね」 「はっ、だったら入れてやれよ、慎吾」 軽口を叩き合いながらも、二人の指は遠慮なく裕史の中を弄り続けていた。 それぞれ好き勝手しているから、出入りのタイミングがバラバラで、裕史は身構える事も出来ない。 しかも指が作り出す隙間から、お湯が入り込んでくる。 その刺激と辛さに、裕史は身体を強張らせながら唇を噛み締める。 「……くっ……っ、…やめっ……」 「あんだけお仕置きによがり狂っておいて、良く言うぜ」 「……っ、言うなっ!」 「でも事実だろ?ローターを身体中に付けて、イカせて欲しいって、俺のモンをぺちゃぺちゃ舐めて、慎吾に腰振って…」 「……ちがっ…、んぁ…ぅあ、あ……」 「堕ちたようで堕ちきらない。それが裕史先輩のたまらない所なんですけどね」 楽しげに呟きながら、慎吾は目の前で揺れる裕史の首筋にそっと唇を寄せ、吸い付いた。 ねっとりと広めに触れるように舌を押し付け、濡れる項から耳の裏へとぬめぬめと這い回れば、抱き込んだ肩が細かく震える。 「……ぅ、はぁっ……」 背筋をじわりと何かが這い昇る。 それは確実に裕史へと快楽をもたらし、慎吾と武光の愛撫一つ一つが小さく灯った炎をすかさず増幅させていく。 昨日、初めて犯されたのと同じ場所で、またこうして二人掛かりで襲われている。 それなのに。 昨日とは比べようも無いくらいに、身体が感じやすくなっているのが解った。 普通では考えられない、後孔を突き刺し肉襞を弄る指の動きが、頻りに快楽をもたらしてくる。 心は今でも嫌だと有らん限りの声で叫んでいるのに、身体が勝手にどんどんそれを求め始める。 あの蕩けるような快楽を知ってしまったから。 また味わいたいと心の奥底では思っているから? 「んっ…っく………」 指腹で弱い部分をそっと擦られ、瞬間的にきゅっと反り返った背が、より強く慎吾の胸に抱き込まれる。 入り口をわざと縁取るようになぞりながら、指が後孔から離れていった。 倣うように武光の指も抜かれ、そのまま前に廻り裕史の中心に絡み付く。 [*前へ][次へ#] [戻る] |