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■ 3

雅一の言葉に、夏彦のすぐ側へと香炉を持つ手が伸ばされる。
ふわりと目の前の空気が桃色に染まったかと思うと、どっと甘い香りが体内深く入り込む。

「……ん、ぅ…」

夏彦は地面がゆらりと揺れるような感覚を覚え、無意識に雅一の身体へと身を寄せていた。
その瞬間、着物が擦れた箇所がカッと火を吹いたかのように熱を帯びる。

「ぁ…は……」

戸惑いの声が溢れ、夏彦は思わず瞳を開いた。
そこはすでに薄く水膜に覆われ、しっとりと潤んでいる。

「夏彦様……」

雅一は耳の穴へと息を吹き込むように名を紡ぐと、しっかりと合わさっている着物の前襟の間に手を差し込み、胸を撫でるように横へ大きく寛げた。
肩まではだけさせ、露になる陽に焼けた肌に無骨な手を滑らせる。
前で結ばれた帯を片手で解いて、しゅるりと腰から抜き去り、同時に首もとへと顔を埋め重なりながら夏彦の身体を床に横たえた。
カクリと上向き曝けだされた首筋を舌で丹念に舐めながら、左手は胸の尖りを探り、形が変わるほど手の平で押しつぶした。

「んぁ……、や…、ぁ……」
「夏彦様」

ヒクンと背が仰け反るのを上からやんわりと抑えつつ、雅一の唇はもう片方の胸の粒を含む。
まだ反応を示さない乳首を舌で捏ね回し、軽く吸えば、少しずつぷっくりと膨らんでくる。
同様に芯をもち始めた右の乳首を指で摘み、すりすりと二本の指で擦り合わせれば、夏彦が微弱な刺激を持て余し、身を震わせる。

「…やめっ…そんなとこ……、あ、雅い、ちっ……」
「どうしてです?お好きなはずですよ」
「し、知らなっ……ぁあっ、嫌だっ……」
「まだ…、ん……、思い出せませんか?」
「やぁっ……、舐めたま、ま…ぁ、喋ら、な……でっ……」

くちゅくちゅと、含んだ乳首が唾液ごと捏ねられる。
合間に喋る雅一の歯が、微かに当たるのさえ感じ過ぎてしまう。
他人との触れ合いがほぼ皆無だとはいえ、これだけの刺激で身体が蕩けるように熱くなるなんてあり得ない事だった。
夏彦は浅く熱い吐息を散らしながらも、くっとこらえるように歯を噛み締める。
だがすぐに雅一の手がさわさわと胸の上を這いずるだけで、ピンと身体が強張ってしまう。

「ぅあ…、あ……」

閉ざしていた唇をこじ開けて、喉から声が溢れ出す。
常よりも甘く高い自分の声に羞恥し、思わず両手で耳を塞いでいた。
すると何も遮る事の無くなった雅一の愛撫が激しさを増すから、慌てて身を離しにかかる。
だが上手く力が入らない四肢はろくな抵抗も出来ず、逆に与えられる快楽の深さに雅一の肩へと縋り付く事になる。

「ふぁ…、だ、めだっ……、も…やめっ…んぅ」

頭を振り被り拒絶するが、丁寧な口調と愛撫に反して、雅一はいっこうに身体の上からどこうとしなかった。
ただ少し困ったような、聞き分けの無い子供に向ける瞳で見下ろすと、胸を撫でていた左手をするすると下腹部へ伸ばす。
綺麗に浮き出た腹筋の筋を指でなぞり、臍の周りを突き。

「何を嫌がる事があります?夏彦様はあんなに喜んでいたのに……」
「ぁっ…ん、知ら…なっ……」
「我らの奉仕に歓喜の声を上げ、もっともっとと強請っておられた」
「そんな事っ…ぅ、…無いっ……!お、俺には織姫が……、ふっ…、愛を誓い合った妻がっ……あっ!」
「しかし、もう何年も逢ってはいない。一目姿を見る事も、声を聞く事も無い。もちろん、こうして肌を触れ合う事も、愛の契りを交わす事も出来ない」

訴えるような眼差しを見返しながら、雅一の指がふと緩いズボンの上から夏彦の中心に触れた。

「…っはぁ!」
「……あぁ、ここはどうやら覚えていたようですね」

すでに中から布地を突き破らんばかりに張り詰めたそこは、先走りの滲みさえ滲み出ていた。
雅一はヒクヒクと揺れる身体を巧みに押さえ付けながら、ズボンの前を寛げると躊躇無く中へと手を潜り込ませる。
同時に、周囲に立つ男の一人が邪魔なズボンを引き下ろし完全に取り去ってしまった。
解放されフルリと勃ちあがるモノは、透明な液を滴らせている。

「たったあれだけの愛撫で、こんなになっていますよ」
「ぁあっ…、あ、……っあ…」
「夏彦様が忘れようとしていても、身体は我らの事をこうして覚えている」

ぐちゅり。
大きな手の平で包み込むように握りしめ、根元から先端へと強めに扱く。
それだけで夏彦の腰がガクンと大きく揺れた。
クワァァン。
首元のベルが衝撃にゴトリと転がり、濁った音を鳴らす。
その余韻に被さるように、夏彦の悲鳴混じりの声があがった。


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