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(性)教育的指導 サンプル
■ 2

唇はぽってりして弾力がありそうだ。
口自体が大きいから、今のように笑みを浮かべていると、顔全体で笑っているように見える。
常々薄味だと評される、あっさりした顔立ちの自分と比べると、えらい違いだ。
彼ならばカウンセラーとしての職を無くしても、充分モデルとしてやっていけるんじゃないか。
ふと、そんな事まで思考を流した森坂に対し、牧田は変わらぬ笑顔のまま、もう一度、大きな口を開き問いかけた。

「で、どうですか、放課後?」
「……特に予定は入っていないけど」
「あぁ、良かった。森坂先生は部活の顧問も担当されていないようなので、大丈夫かな〜と思っていたんですよ」

牧田はニッと笑みを深める。

「じゃあ、六時間目が終わったら……と、受け持ちの授業ってビッチリあります、今日?」
「今日は五時間目までだな」
「それは丁度良かった! だったら五時間目が終わってすぐ、第二生徒相談室まで来てください」

場所はわかります? と問うてくる牧田へ、森坂は大丈夫だと手のひらを向ける。
それはいい加減に本気で離れてくれ、という意思表示でもあったのだが。
明るい年下のカウンセラーは自分の左手を合わせ、強制的にハイタッチへ持ち込んだ。
ペチリ。
互いの手のひらが小気味良い音を鳴らす。

「では、よろしくお願いしますね!」

弾むような口調で挨拶を残し、その場を去ろうとする牧田。
その翻る白衣の裾を、森坂は慌てて掴み引き止めた。

「ちょっと待った!」
「はい?」
「……まだ用件を聞いていないんだけど?」
「えっ、だから放課後、第二生徒相談室まで来てほし……」
「それは解ってる!」

この人は何を言っているんだろう、とばかり。
きょとんとした表情で、先ほど言った台詞を繰り返す男。
だから否定の意味を込めて、最後まで言い終わる前に遮り、森坂は短い溜息を吐いた。
胸の前で腕組みをしながら、少し身を屈めて見下ろしてくる長身を見遣る。

「俺が言ってるのは中身だよ。呼び出すのは、何の為かってこと。もちろん、生徒に関することなんだよな?」
「あぁ、それは勿論ですよ! 暇だからお茶でも一杯どうですか〜ってお誘いも無くは無いけど……」

スッと年上の教師の眉間に皺が刻まれるのを目にし、牧田は肩を竦めてみせた。

「だから、そういう可能性もあるって話であって。今日はちゃんと、俺の本業に関わることですよ。まぁ、詳細までは、ここではちょっと……」

苦笑を浮かべながら、周囲を軽く見渡す。
実際、二人の近くには誰もいないのだが、少し離れた場所には教師も生徒も複数人いた。
しかしこちらを伺うような素振りも見えず、声を潜めれば誰かに聞かれる心配も無いだろう。
だがそうだといって、デリケートな生徒の悩みなどを、こんなところで話すべきでは無い。
こういったものは慎重すぎるくらいで丁度良いのだ。
森坂もそれは同意だと、頷きを返す。

「あぁ、それだけ教えてもらえれば充分だ。俺に何が出来るか解らないが、協力させてもらう」
「ありがとうございます」

真剣さを保っていた牧田の表情が、一瞬にして柔らかく解ける。
つられて森坂も自然に笑い返せば、年下のカウンセラーはより嬉しそうに大きな目を細めた。

「大丈夫、森坂先生にしか出来ない事がありますから」

去り際、再び腰を折った牧田は、弾むような口ぶりで森坂の耳元へ囁いていった。





◆ ◆ ◆ ◆ ◆  ◆ ◆ ◆ ◆





牧田の手がその根元へ忍び寄っていく。
教師の視線が彼の手元へ向くまで待ってから、ゆっくりと下から上へ。
先走りに濡れる肉棒の形を確かめるように、年下の青年の指が先端まで滑り上がった。

「あ、待っ……ぅんっ、んんあぁっ!」

裏筋を通って、段差を超える。
最後は蜜が溢れる小孔を塞ぐように、ひたりと天辺で指腹が止まる。
視覚の効果もあり、森坂は中心から背筋へぞくぞくと甘い感覚が昇ってくるように感じた。
意識せず、牧田の指の動きに合わせて腰が浮き上がり、そんな自分の反応にまた羞恥を抱く。

「はぁーっ、はぁーっ……」

見ていられなくて強引に視線を引き剥がせば、すかさず茶髪の青年のもう片方の手が、グイグイと体内を広げにかかる。

「ふぅっ、ん…んっ……や、めっ……あぁっ……」
「ぅん、良い反応」

牧田は透明な体液で濡れた左手を、教師の脇腹で拭いつつ。
下肢に埋めていた人差し指と中指を、ゆるりと引き抜いた。
糸引くローションは縛って立たせている方の太ももへ擦り付ける。

「だけど森坂先生は、これでも感じていないって主張するんでしょ?」

不意に愛撫がやみ、森坂はくたりと脱力した。
牧田の声が聞こえているのか、返事もせずに目を閉じて、忙しない息を付くばかり。
だから牧田が浮かべた不穏な笑みにも気付けなかったのだ。

一度獲物から離れた青年は、膝立ちでサイドテーブルへ近付いた。
マットの隅へ片手を付いてバランスを取りながら身を乗り出す。


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